マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
「あなたはどうする?!住宅ローン」もいよいよ後半となってきました。これまで過去5回は、住宅ローンの借り換えメリットや金利リスクといった、住宅ローン全般に共通するテーマについてお伝えしてきました。第6回目となる今回は長期固定金利の定番商品、「フラット35」という商品についてお話したいと思います。
「フラット35」は、民間金融機関が審査し、貸付をし、回収を行う一方、貸し付けた住宅ローン債権は住宅金融支援機構に売却する、全期間固定金利の住宅ローンです。住宅金融支援機構は買い取った住宅ローン債権を担保に社債を発行し、住宅ローン債権の購入資金を調達します。これがいわゆる住宅ローン債権担保証券(MBS:Mortgage Backed Security)です。このMBSは、住宅ローン債権と住宅金融支援機構の二つの信用力によって支えられた債券ですので、格付機関であるS&P及びR&Iからトリプルエー(AAA)という最上位の格付けを取得しています。一方で、住宅ローン債権の元利金がそのままMBSの元利金支払いに充てられますので、元本償還が満期一括型ではなく、毎月住宅ローン債権の元本償還に合わせて償還されます。したがって、元本償還スケジュールは流動的で、住宅ローン債権の繰り上げ返済があれば、その分MBSの償還も早まります(これを期限前返済リスクと言います)
「フラット35」の特徴は、何と言っても全期間固定金利であることです。住宅ローンは最長35年と貸付期間が長いので、短期で資金調達をしている金融機関は資産と負債の総合的な管理(ALM:Asset Liability Management)上のリスクが大き過ぎて、なかなか長期固定の住宅ローンを提供することができません。
一方、住宅金融支機構はMBSを通して住宅ローンの金利リスクや期限前返済リスクを機関投資家に転嫁するため、安定して長期固定金利の住宅ローンを民間金融機関から購入することができます。さらに住宅金融支援機構は前身が住宅金融公庫で、公的な機関として日本の住宅金融を支えてきました。そこには幅広い国民の住宅取得をサポートするという政策的役割を担っており、それゆえに民間金融機関が貸しにくい、リスクが高いと思われる個人にも貸す傾向にあります。
ところで、世の中の金利は、日銀のマイナス金利政策に象徴されるように低金利でかつ長短金利が縮小するフラット化が進んでいます。それを受けて民間金融機関では魅力的な金利水準で長期固定金利を出すところも出てきました。例えば2016年12月の三井住友信託銀行の30年の長期固定金利ローンの金利水準は0.95%です。一方で「フラット35」の金利は1.1%です。「フラット35」は団信料(団体信用生命保険料)が金利に含まれていないため、正確な比較のために団信料(0.36%)を含めて考えると、金利は1.46%となります。三井住友信託銀行が提供する長期固定金利が「フラット35」よりも0.5%以上も低いということが分かります。これには驚きを隠せません。
以上をまとめますと、「フラット35」は、貸し付け対象が広いため、自営業であることや年収が低いなどの理由で民間金融機関から借りにくい方でも借りられる、しかも長期固定金利で借りられるというメリットがあります。一方、個人信用属性の高い方、例えば上場企業に勤めの方や、一定水準の継続的な収入を見込める方は、「フラット35」以外に民間金融機関が提供するより低い金利の長期固定金利の住宅ローンを探すことを検討すべきだと考えられます。
また、個人信用属性が高く、固定金利を望まれる方で、すでに「フラット35」で住宅ローンを組まれた方は、民間金融機関の提供する長期固定金利の住宅ローンへの借り換えを検討してみてもいいかも知れません。
MFS 代表取締役CEO 中山田 明
(住宅ローンコンサルティングサービス「モーゲージ・ネクスト」を運営)
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