マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
ドル/円相場は「トランプラリー」で115円台にまで上昇してきました。11月9日の大統領選挙当日は、101.18円まで円高ドル安となる局面がありましたので、ちょうど1か月で14円もの上昇を演じたことになります。
今週はFOMC。米国は2015年12月に利上げを実施しましたが、以降1年に渡って2回目の利上げが実施されていません。市場は今週のFOMCでの利上げをほぼ100%織り込んでいますので、利上げ実施は確実とみられます。市場の注目は来年2017年の利上げ回数へとシフトしており、ドットチャートと呼ばれるFOMCボードメンバー17人の今後3年間のFF金利水準の予想に注目が集まっています。
市場関係者の中には、「実際に利上げをすれば材料出尽くしでドル高は終焉する」と予想する向きもあります。実際、2015年のFOMCで利上げが実施される前までは、利上げ観測からドル高が継続していましたが、実際に利上げした後にはドル高の勢いは衰え、2016年年明けからドル/円相場は下落の一途を辿りました。今回もまた、ドル/円相場は米国利上げを起点に折り返して円高へ向かうでしょうか。
注意が必要なのは、米国金利です。確かに2015年12月の利上げ以降、米国10年債利回りは2.3%台から2月の1.6%台へと下落しました。この時、WTI原油価格は26ドル台へと下落、また、人民元の切り下げによる株式市場の動揺なども同時に起こっていたことで、マネーが米国債へと逃避した可能性も大きく、決して利上げによる影響だったとは言えないものの、タイミング的に合致していたことも事実。米国利上げの影響で人民元切り下げをせざるを得なかった、あるいは原油安を招くきっかけとなったと指摘されれば、影響が全くなかったと言い切ることはできません。今回も米国利上げによる影響が他市場へ波及することで、再び米国債に資金が還流することがあれば、米国長期債利回りの低下による日米金利差縮小で、ドル/円相場が大きく下落するリスクはゼロではないでしょう。
しかし、この影響でもし米国債利回りが下落、ドル/円相場が大きく下げる局面があれば、そこは買い場となって、再上昇するのではないかと思っています。というのはドル/円相場の「需給構造」において、圧倒的にドルを買いたい向きが多いとみられるからです。ドルの売り手である輸出勢は今年度の予約をほぼ済ませてしまっているという情報がある一方、ドルを買わなくてはならない輸入勢は、このドル高のスピードについていくことができずに、ドル調達が遅れているというのです。つまりドルが下がったら「ドル買いをしなくてはならない」輸入勢が多く、ドル/円相場が急落すれば、こうした実需の買いがどっと出てくる可能性が大きい地合いとなっているのです。また100円近くまで円高となった今夏、日本企業によるM&Aのニュースが相次ぎましたが、こうしたM&A企業の買収用のドル調達も遅れているとの情報が。こうした個別の企業の懐事情は具体的金額がニュースにはならないものの、市場関係者らと話していると噂として出てくるものです。真偽のほどは確認できないものの、これまでのドル/円相場で「押し目待ちに押し目なし」という上昇が続いたのも、下がれば買いたい向きが出てくるからなのでしょう。現在までのところ、まだまだそうした買いは出てくる地合いに変化はないと指摘されていますので、FOMC後、ドル/円相場が下落することがあれば、すかさず安値は拾われて反発していくものと見ています。結局のところ、相場で価格を形成するのは「需給」なのです。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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