第192回 『二人っ子政策』の次は? 【北京駐在員事務所から】

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第192回 『二人っ子政策』の次は? 【北京駐在員事務所から】


中国では、昨年末を以って一人っ子政策(中国語では「独生子女政策」と言います)が完全に廃止され、全ての夫婦が二人の子供を持つことが認められました。
高齢化の進行と労働人口の減少という人口動態の変化に対応するための政策変更でしたが、一年近くを経た現時点では、当初のもくろみほどの効果は確認できず、出生数の増加は期待を下回っていると言われています。

一人っ子政策は、廃止までの間も徐々に緩和が図られており、2014年の初めからは、夫婦のいずれかが一人っ子の場合、二人目の子供を持つことが認められるようになりました。
1,100万組の夫婦が、二人目を持てるようになったのですが、昨年5月までの一年強の間に、実際に二人目を儲けた夫婦は145万組に止まりました。
都市部での生活費、特に住居費と教育費の高騰が、第二子を儲けることの阻害要因になっていると見られています。このあたり、日本の少子化とも重なります。

長く続いた一人っ子政策の影響は大きく、中国では人口の急速な高齢化と生産年齢人口の減少が続いています。
これが将来経済成長を阻害し、また国家財政の圧迫要因になるとの見方も強まっています。
ちなみに、生産年齢人口(2013年までは15~59歳、2014年以降は15~60歳)の推移は、

2011年9.41億人

2012年9.37億人

2013年9.35億人

2014年9.16億人

2015年9.11億人

となっており、専門家の間では、「今後増加に転じる可能性は無い」との見方が強まっています。
一方、高齢者(中国では60歳超)の人口は、昨年2015年時点で2.22億人、総人口の16%程度を占めていますが、2050年には総人口の30%を超えると予想されており、日本を上回るスピードで高齢化が進むと見られています。

人口問題を研究している大学教授は、生産年齢人口の減少と高齢化の進行は人口管理政策を全面的に撤廃しても止められないと述べ、将来を悲観視しています。
一方、別の大学教授は、現在の「二人っ子政策」からさらに緩和を図るべきか否かについては、なおしばらく調査研究を行う必要があると指摘しています。
同教授は、二人っ子政策への移行は、短期的あるいは中期的には大きな変化につながらないとしつつも、現行の政策が今後数世代に渡り浸透することで、今世紀末頃には、人口の増加につながる可能性があると述べています。
とは言え、それまで国家財政、経済あるいは社会が維持できるのか、心配の種は尽きません。

日本では、少子高齢化の進行で、将来労働力の不足が生じるとの懸念が高まっており、移民の受入に関する意見も徐々に見られるようになりました。
中国の現状を見ますと、将来、中国が移民の受入を考える可能性も否定できません。
食糧やエネルギー資源と並び、世界中で若年労働者の奪い合いという事態が発生するかもしれません。
日本でも、将来の人口構成、産業構造や社会のあり方などについて、真剣な議論が必要と思われます。

中国の現状から、日中両国の将来の姿に思いを馳せることとなりました。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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