マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
今週は為替市場の流動性が低下し始めることに注意が必要です。欧州では12月20日頃からクリスマス休暇に入る人も少なくなくありません。米国は12月25日と1月1日が祝日となりますが、各々が有休休暇を組み合わせて長期休暇にするのが一般的な過ごし方とされています。今週辺りからは欧米勢がクリスマス~冬期休暇に入ってくる時期となるため、金融市場では、長期休暇にリスクポジションを保有していたくないという心理から、ポジション解消の手仕舞い売りが膨らみ、マーケットの逆流となるリスクが高まると言えましょう。市場参加者が減少し、流動性が低下すれば価格が飛びやすくなります。相場の急変時には思わぬ高値、安値が示現されるかもしれません。
12月14日FOMCで、米国フェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標が市場の予想通り0.25%引き上げられました。同時に示した経済見通しでは、2017年の0.25%利上げの予想回数が中央値で3回となり、9月時点での2回からペースが速まったことを受けて、一層のドル高が進行。ドル/円相場は15日に1ドル118円台まで円安ドル高を示現しました。11月8日の大統領選挙でトランプ氏が勝利した際に示現したドル/円相場の安値は101.18円。それからわずか1か月あまりで17円ものドル高となりましたが、先週のFOMCで年内の大きなイベントはほぼ終了しました。ここからさらにドル買いが進むための材料が出てくることは考えにくく、今週はこのトランプラリーで利益を上げた向きが休暇前に手仕舞いを考える時期に入ってくることから、多少の調整が期待されます。
しかしながら、このわずか1か月の急激なドル上昇で、ドルを必要とする向きの、ドル調達があまりできていないだろうことには変化がないようです。このことは先週のコラムに書きましたが、FOMCの翌日は15日のゴトー日であったために、15日午前4時にFOMCの結果発表後に117円台にまで急騰したドル/円相場が、仲値に向けて一段高となった背景には、輸入業者による大口の買いがあったと指摘されています。
※仲値=金融機関で顧客が外貨を売買する際の基準レート。個々の取引の度に為替レートを銀行に問い合わせるのは大変なので、毎朝9時55分の為替レートを参考に決定します。日本の商慣習で、5日、10日、15日、20日、25日、30日の末尾5・10日はゴトー日と呼ばれ、輸入決済を行う業者が多く、円売り注文が銀行等の仲値の決定する時間に向け集中することがあります。
FOMCの結果を受けて、すでに115円台から2円もの円安ドル高が進行していたにもかかわらず、仲値に向けてドルが一段高となった背景にあったと思われる輸入勢の存在。どれほどドルが急騰しようとも、ビジネス上、どうしてもドルを調達しなくてはならなかった苦しい事情が見えてきます。輸出や輸入の実需では月末で取引される決済が多いのですが、
12月というのは2016年の区切りとなる月でもあり、12月までに決済しなくてはならないという輸入企業もあろうかと推測されます。今週は海外勢がポジションを解消するドル売りをする反面、本邦輸入勢を代表とする、ドル買いが遅れている向きによるドル買いが交錯する週となると思われます。基本は日米金利差が大きく広がっていますので、ドル高基調であることには変わりがなく、ドル急落局面はドル買いの好機となるように思います。
週明けから豪ドル/ドルやNZドル/ドルなどのオセアニア通貨が大きく下落してきており、これを受けてクロス円である豪ドル/円、NZ/円がトップアウトした様なチャートになってきました。クリスマス休暇入りで流動性が低下する中で、クロス円主導で思わぬ円高を演出するリスクは否定できませんので、取引の際には普段よりも一層慎重にリスクコントロールを!
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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