マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
「あなたはどうする?!住宅ローン」もいよいよ第8回となります。これまでは、住宅ローンのキャッシュフローの特徴から団信まで、住宅ローンの商品性について色々ご説明してきました。残り3回は、いよいよその集大成といったところで、実例を取り上げながら、昨年のマイナス金利の導入以来、ブームとなっている住宅ローンの借り換えについて説明したいと思います。
現在、私の運営している住宅ローンコンサルティングサービス「モゲチェック・プラザ」では、毎月数十人もの方が借り換えに成功しています。借り換えによってお客様が実現される総返済額の削減額(以下、「借り換えメリット」と言います)は平均約4百万円ですが、中には10百万円以上の借り換えメリットを実現される方もいます。このような高額な借り換えメリットを実現する方のほとんどは、前回ご紹介した住宅ローン商品「フラット35」を借りている人です。なぜこれほどまでに、借り換えメリットが高額になるのでしょうか。実際のケースを取り上げて、その理由を説明したいと思います。
Aさんは残高62百万円、返済期間27年、金利1.8%のフラット35を借りていらっしゃいましたが、0.55%の変動金利の住宅ローンに借り換えました。これにより、総返済額が82百万円から70百万円となり、借り換えメリットは12百万円となりました。毎月の返済額も26万円から22万円にと、4万円も下げることができました。フラット35から変動金利への借り換えでメリットが大きく出る理由が二つあります。
一つ目の理由は固定金利から変動金利に借り換えて金利が大きく下がること、二つ目の理由は、隠れた金利とも言える団信料の削減ができることです。Aさんの場合ですと金利が1.8%から0.55%へ、1.25%下がりました。加えて、フラット35の場合、金利とは別に年に一度、団信料を支払う必要があります。これは金利にすると約0.36%に相当します。民間金融機関の住宅ローンだと団信料は金利に含まれますので、別途団信料を負担する必要がありません。したがってAさんは、フラット35から変動金利の住宅ローンに借り換えることで、表面金利で1.25%、団信料でさらに0.36%、合計1.61%の金利削減に成功したことになります。これがフラット35の借り換えで、大きな借り換えメリットが実現できる理由です。
一方、フラット35から変動金利に借り換える際に注意するポイントは、金利リスクです。全期間固定から変動にするということは、金利低減のメリットを享受する反面、将来の金利リスクを取ることになります。その判断をする前に以下の三点を検討すべきと考えます。
一点目は、将来、金利が上昇しても毎月の返済に支障が出ないかどうか、についての返済能力分析です。今より2%程度金利が上昇した場合に毎月の返済額がどれくらいになり、家計へのインパクトはどれくらいあるのか、試算しておくべきでしょう。一般的に銀行は3%前半から4%の金利を使って借り手の返済能力を審査しています。したがって、銀行の審査に合格したということは2%程度の金利上昇であれば返済できるということのお墨付きがもらえた、と考えることもできます。
二点目は全期間固定金利との損得比較です。金利は今すぐ上がるということはなく、今後時間をかけて上がっていくでしょうが、その場合どのようなタイミングでどれくらい金利が上昇すると全期間固定と総返済額が同じになるのかといったブレークイーブンポイントを知っておくべきでしょう。ご自身が考える将来の金利シナリオが、当該ブレークイーブンポイントより低ければ、変動金利に借り換えるべきだと思います。
最後の三点目は、金利の動きをモニタリングする体制の確保です。金利上昇はある時、急に起きるのではなく、その前兆となる国内外の経済や金利政策の動きがあるはずですから、ご自身でそれらの情報を集め分析しておくことが大事です。もしくは、その道のプロフェッショナルに相談してみるのも選択肢の一つと考えられます。いざ金利が上がってから右往左往するのではなく、金利が上がる前に固定金利への金利変更や借り換えといった選択肢を検討しておくべきでしょう。その際には二点目に検討した損得比較が重要な指針となり得ると考えられます。
MFS 代表取締役CEO 中山田 明
(住宅ローンコンサルティングサービス「モーゲージ・ネクスト」を運営)
家計の見直しは住宅ローンの借り換えから。ベストな住宅ローンを無料で診断できる「モゲチェック」
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