第196回 大学生の起業への意欲は旺盛 【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第196回 大学生の起業への意欲は旺盛 【北京駐在員事務所から】

日本と同様中国でも、大学生にとって就職は卒業後の人生を左右する大きなイベントです。
政府機関(公務員)、国営企業、外資系企業や大手のIT企業などが人気の就職先ですが、近年、大学在学中に、あるいは卒業後に自ら事業を興す学生が増えていると伝えられています。

北京の有力大学である中国人民大学が、このほど中国全土の大学1,767校の43万名以上の学生を対象に、起業に関する考え等についてのアンケート調査を行い、結果を公表しました。
回答者の28%、12万名以上が、既に自身で事業を立ち上げている、あるいは過去に起業に関連した経験を得ているとしており、早くから起業を意識していることがうかがえます。

「起業意欲の程度」については、以下の回答分布となりました。

強い:18.2%

気持ちが傾いている:31.8%

考えたことがある:39.8%

考えたことはない:10.2%

また、「起業を考える理由」については、

組織に縛られず自由に仕事がしたい:37.2%

起業家という夢を実現したい:20.0%

お金儲けがしたい:15.7%

他に満足できる職業が見つけられない:10.8%

などとなっています。

近年、大学生の就職難が社会問題化しており、また経済構造の転換(製造業依存からサービス、ソフト産業重視に)が求められていることから、政府は起業を支援する様々な政策を実施しており、これが学生の背中を押しています。
例えば、大学在学中に起業した者が、学業と事業の両立を図ることを容易にするため、大学が進級要件の緩和を図る等の制度改正を行っています。
また、有望な事業に資金を供給するエンジェルファンド等も増加しており、追い風になっています。

とは言え、米国などと同様、学生あるいは卒業生が始めたビジネスの成功例はわずかで、年配者などを中心に、起業にネガティブなイメージを持つ人達も多く存在します。
人事コンサルティング会社の幹部は、「最も重要なのは、起業に対する社会の評価が変わること。学生やその親たちは、起業をリスクではなく機会ととらえつつある」と述べています。
「失敗してもやり直しが容易であること」が極めて重要と言え、この点は日本も学ぶべき点のように思います。

中国は人口が多く、国内市場が巨大ですので、競争は激しいものの、起業には有利な環境にあると言えます。
テレビニュースなどでは、若くして成功した経営者が、高級マンションに住み、高級車を運転するなど優雅な生活を送っている様子を報じており、これも学生の起業意欲に火をつけています。
もちろん、「皆が成功」というわけにはいきませんが、失敗からも糧を得て、次のチャレンジにつなげて欲しいと思います。大変なことも多いのでしょうが、若い人々に活力があることがうらやましく思えてしまいます。

起業を志す中国の学生の姿に、様々な点で日本と違いがあると感じさせられた話題でした。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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