第92回 「トランプ次期大統領」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第92回 「トランプ次期大統領」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。2017年も始まりました。読者の皆様はお正月をいかがお過ごしでしたでしょうか。筆者のお正月は、ちょっと長めの連休といった印象でしかなかったためか、あっと云う間に終わってしまいました(笑)。さて、2017年の株式相場はどうなるでしょうか。筆者は今年も結構相場は強いのでは、と考える一人なのですが、皆様の見立てはいかがでしょう。何卒、本年もよろしくお願いいたします。

新年の株式市場は大幅上げから始まりましたが、その後はやや調整色が出てきたように感じています。国内景気は昨年秋から徐々に回復基調が見えてきたようで(年末も繁華街はいつになく活気づいていました)、今年の年内衆院解散の可能性も含め、当面は基本的に追い風要因が揃ってきているように思えます。一方、欧州の選挙やトランプ次期大統領の政治手腕など、国外要因には不安定要素がかなり見えています。2017年はまず、その国外要因が株式相場の大きなテーマになってくるのではないでしょうか。ということで、今回はもうすぐ就任となります「トランプ次期大統領」を取り上げたいと思います。昨年秋以降のトランプ相場はまさに圧巻で、停滞感の強かった株式市場に活況をもたらしました。足踏み局面はあっても急落することもなく、相場の腰は強い印象です。ただ、本当にこのまま強気で臨んでよいのかどうか、未知数である氏の政治手腕に対する漠然とした不安もまた払拭されていないように感じています。

実際、氏は企業の米国外工場建設に対して批判を加えるなど、物議を醸す発言が依然として頻繁にあり、「大統領に当選したら発言は抑制的になり、現実的になるのでは」との憶測はこれまでのところ、どうも空振りに終わっているようです。先週の大統領選後初の記者会見でも、これまでと発言のトーンは変わりませんでした。同僚とは冗談で、「大統領に就任したら、抑制的で現実的になるはず」へと期待(?)は先送りされ、そのうちに、「大統領として経験を積めば、抑制的で現実的になるはず」、「中間選挙が終わったら、抑制的で現実的になるはず」、そして最後は「大統領2期目になれば、抑制的で現実的になるはず」になるのでは、と笑って話したりしていたところです。基本的な構図としては、閉塞感打開へ氏の爆発力に期待が先行するものの、それが行き過ぎて破壊となってしまうことへの懸念もまた大きいということでしょう。だた、期待は先行するだけ大きく、またその期待に応えてほしいという願望も強いというのが、期待先送りの根本にあることも事実です。株式市場も、景気の回復といった要素は無視できませんが、やはり氏への大きな期待が牽引車となっていると言えるでしょう。

このことは、今後の株価はその期待がどれだけ現実化するのか、あるいは、破壊への懸念がどれだけ現実化するのか次第である、ということを如実に示しています。しかし、まだ現実化されていないため、その見極めを期待という言葉で先送りしているのが実態と云えるかもしれません。筆者も注目した先週の氏の記者会見は、選挙戦のトーンそのままであったため、やはり投資判断を(消極的にでも)先送りせざるを得なかった投資家も少なくなかったものと考えます。先送りという選択肢は、本来それだけリスクが高まるということでもあるのですが、それでも先送りしたくなるほど、氏に象徴される世界の変化は大きいとも云えるでしょう。ただし、これらは今後徐々に明らかになっていくことは確かであり、その都度、株式市場はその評価を変えて行く事になると予想します。2017年に関して筆者は、(強い相場を予想しているものの)そう割り切った投資スタンスの方が、むしろ腰を据えたスタンスよりも当面は有効になってくるのではないか、と考えています。

そして、トランプ次期大統領の一挙手一投足、さらには氏のツイッター発信を見ながら、株価が神経質な動きを余儀なくされるとすれば、相対的に内需関連銘柄は安定感が増すことになるはずです。相場を主導する変動の大きな銘柄群は直接的な米国関連企業となるでしょうが、その裏側でリスク抑制型の銘柄群をこれらが構成することになります。そして、氏の発言・行動の真意が見え難い場合は特に、こういった「裏」銘柄の重要性は一層高まります。とても逆説的ですが、トランプ次期大統領をテーマとすれば、その対極となる内需企業もまた、重要な対象企業群として浮上してくることを見落としてはなりません。


コラム執筆:長谷部 翔太郎(証券アナリスト)

日系大手証券を経て、外資系投資銀行に勤務。証券アナリストとして、日経や米Institutional Investors誌などの各種サーベイで1位の評価を長年継続し、トップアナリストとして君臨する。外資系投資銀行で経営幹部に名前を連ねた後、現在は経営コンサルティング会社を経営する。著述業も手がけ、証券業界におけるアナリストのあり方に一石を投じる活動を展開中。著作は共著を中心に多数。

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