マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
いよいよ今週1月20日金曜にトランプ次期大統領の就任式を迎えることで、11月8日の大統領選挙から続いた「トランプラリー」終焉に警鐘を鳴らす向きの声が大きくなってきています。米株ダウ平均は2万ドル大台を目前に足踏み状態。日経平均は2万円大台、ドル/円相場は120円大台が近くて遠いレベルとなってきました。注目された11日のトランプ氏初の記者会見を失望し米金利が低下、全面ドル安となったこともあり、トランプラリーは就任とともに終焉するだろうとの指摘も無視できないという不透明感が漂い始めました。この先トランプ氏就任以降もラリー継続期待を強める向きと、終焉を予想する向きがぶつかり合っていることで、揉みあい相場となっているものと思われます。
この足元の膠着も20日の就任式を迎えることで一応の答えが出るものと思っていますが、11日のトランプ氏記者会見を受けて、ドル/円相場は113円台にまで軟化したことから、トランプラリーで上昇した幅をフィボナッチ・リトレースメントで計算した23.6%押しの114.55円を割り込んでしまっています。となると、次なる下落メドは38.2%押しの112円近辺。トランプ氏就任以降もドル高が継続すると考えるなら、20日就任前後に112円まで下落があればドル買いの戦略でいいと思いますが、果たして本当にドル高継続となるのでしょうか。
トランプ氏は選挙戦中に米国の製造業を守ることを最優先課題としてきたことで「トランプ氏当選ならドル安政策」との擦りこみが大きかったのですが、現実には当選後、ドル高に動いています。マーケットは、製造業保護でドル安政策となるという側面よりも、大型減税とインフラ投資の拡大を材料視、リフレ的反応を示してきました。トランプ氏がドル高けん制発言(あるいはツイート)でもしようものなら、ドルは急反落しかねないというのが為替市場での円高論者の見方です。しかし、トランプ氏は「強い米国」政策を唱えており、世界から米国に資金を還流させてインフラ投資などに投入する一方で、ドル高の弊害を「国境税」で遮断するというポリシーミックスを掲げているとして、ドル高は継続するとの見方も存在しています。果たしてトランプ氏の政策はドル高なのかドル安なのか、、、20日の就任式以降、どのような具体的政策が出てくるかに注目です。
金融政策面から見れば、日本が長期金利をゼロ近傍に固定する「イールドカーブ・コントロール」政策を導入したことで、ドル/円相場は米金利次第という解り易い相場となっているため、2017年は米国長期金利が最重要指標。この金利の変動は米国の利上げのペースなどにも大きく影響を受けますので、米国利上げが年何回実施されるのか、そして、最初の利上げ時期が3月なのか6月なのか、という点に注目です。先週発表された12月小売売上高は、昨年11月にやや勢いを失った後に再加速して第4・四半期を終えたことを示す内容となったことで、一時ドル買いが加速しましたが、週明け月曜がキング牧師誕生日祝日休場となるため、3連休を控えてのポジション調整に押されて、行って来いの相場となりました。指標の内容を吟味し、利上げの時期が早まる可能性を織り込む形でドルが買われる機運が今年の金融政策面からみたテーマとなってくるものと思われます。今週は18日水曜の12月消費者物価指数や19日木曜の12月住宅着工件数などの指標に注目。まだ3月利上げ織り込みはCME Fed Watch で確認すると20~25%程度。6月織り込みでも48%と年央の利上げ織り込みもまだ50%に到達していません。市場が意外に慎重なのはトランプ氏リスクも影響しているでしょうか。
また、今週17日から20日までスイスジュネーブにてダボス会議。ダボス会議とは世界各国の政財界のリーダーや学者らが参加し、賢人会議とも呼ばれています。世界の富裕層が今年1年のストラテジーを固める意見交換の場、などとも言われていますので、どんなことが話し合われるのか注目する金融関係者も少なくありません。今年は習近平国家主席が初参加ということが話題ですが、一方でトランプ次期大統領はダボス会議に代表を派遣しないとしています。中国は米国の対中経済政策にけん制するものと思われますが、空振りに終わってしまうのでしょうか。どんな話合いがされるのか留意しておきたいビッグイベントです。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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