マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
中国の西北部、シルクロードで知られる新疆ウイグル自治区は、複雑な民族構成や多くのイスラム教徒が居住することによる宗教問題を抱え、独立運動やテロ、騒乱が絶えない地域になっています。
2013年10月には、北京の天安門前の歩道に自動車が突入、炎上する事件が発生し、同自治区の少数民族によるものと見られています。
また、自治区首府のウルムチなどでは、無差別テロ事件が発生しており、日本の外務省も、同自治区とチベット自治区について、危険情報「レベル1:十分注意してください」を発出しています。
中国について、危険情報が発出されているのは現在この2自治区のみとなっています。
新疆ウイグル自治区政府は、国外で訓練を受けたテロリストの入国と国外への脱出を阻止するため、このほど国境警備と入国審査を強化する方針を公表しました。
西部カシュガル地区の共産党幹部は、「テロリストは一人たりとも入国させない」とし、特に隣接するパキスタン、アフガニスタン等におけるテロ組織の動静に注意を払い、脅威が高まっている場合には特別の対応を取ると述べています。
先週の8日(日)にも、自治区南部の和田地区で、テロの容疑者3名が警察により射殺されたと報じられています。3名は2015年4月に発生したテロ事件に関与したとの容疑に基づく警察の身柄拘束に対し抵抗し、射殺されたそうです。
和田地区の政府幹部は、国境付近ではテロ組織の活動が非常に活発であるとし、今後も法に基づき警備と入国審査を厳格に行うと述べています。
北京で普通に生活していても、例えば地下鉄駅への入場の際に手荷物検査があるほか、天安門付近を歩く際にも随所で手荷物検査を求められます。
さらに、博物館など施設への入場の際には、身分証明書の提示も求められます。当局がテロ活動に非常に神経質になっていることがうかがえます。
特徴的なのは、放火や焼身自殺を防ぐためでしょうか、液体類の検査が非常に厳しいことです。
人民大会堂の裏手に、国家大劇院というオペラハウス、コンサートホールなどの複合施設があるのですが、そちらへの入場時にも手荷物検査があり、飲料水などの持ち込みができません。
入場者と警備員が口論になっている場面をしばしば目にします。
また、空港での出入国審査も、見るからに厳重に行われており、時に時間がかかって仕方がありません。日本人は、観光や商用などでの短期の入国についてはビザが不要ですので、比較的円滑に進むのですが、外国人の入国審査の窓口で大もめにもめることは日常的な光景です。
自分が並んだ列の前方でこれが起きると悲劇です。
昨年秋には、北京空港の出国審査の列で、外国人のグループが審査官と口論になっていました。出国時にトラブルが生じるというのもなかなか考えにくいのですが、中国滞在中に何かやらかしたのではないかと勘繰ってしまいます。
今年は5年に一度の共産党大会開催が予定されており、会期中及び前後には一段と警備が強化されることが考えられます。テロ組織もこの時期を狙って活動を活発化させることが予想され、街の空気も重苦しいものになるかもしれません。ちょっと憂鬱になります。
比較的安全な日本に感謝するとともに、日々の生活でできる限りの注意を払いたいと思わされたニュースでした。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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