第243回 トランプ大統領就任式通過で今後のドルの方向性を占う4つのポイント【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第243回 トランプ大統領就任式通過で今後のドルの方向性を占う4つのポイント【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

トランプ大統領就任式ではトランプ大統領は「アメリカ第一主義」を唱え、選挙戦中から宣言していたTPP離脱を表明しました。大きなサプライズがなかったことで、マーケットには大きな波乱はありませんでしたが、市場には「トランプ・ユーフォリア」を警戒する声も根強く、じわり広がりつつあるようです。トランプ氏の政策の実効性などがやり玉に挙げられることで、上昇してきた株価や長期金利が反転するリスクも否定できませんが、就任式当日、20日の米国株ダウ平均は94ドル高となり、まだ2万ドル大台を射程圏内に据えた高値持ち合いは継続しています。就任式を波乱なく乗り越えた今、トランプ・ラリーが継続するか否かは、イベントを材料に相場を崩す、もしくは買い上げるといった「イベント・ラリー」をきっかけに結論が出ませんでしたので、ここからは

①トランプ氏の政策の実効性を巡る報道

②米国が年内2~3回の利上げを可能にする実体経済の強さ

③そしてテクニカル的な上昇トレンドが維持されているのかどうかを見極めることと

④投資家らのポジションの偏りによる巻き戻しのリスク

などに注目していく必要があるでしょう。

①今後のトランプ氏の政策の実効性については既存メディアによる報道の他に、「指先介入」とも呼ばれるトランプ氏自身のTwitterへの書き込みにも引き続き注意が必要ですが、こればかりは、予測不能。

②米国経済の強さを確認する意味で、引き続き雇用統計などの指標には注目していく必要がありますが、今週の注目は27日に発表される第4四半期GDP速報値です。前回第3四半期のGDPは前期比年率+3.5%と非常にいい数字でした。(第2四半期は+1.4%)経済の約7割を占める個人消費は+2.1%で前期+4.3%のほぼ半分に減少。在庫と貿易を除く国内最終需要は+1.4%と、前期の+2.4%から減速という冴えない数字であったにもかかわらず輸出が+10%もの大きな伸びとなったことが背景でした。この内訳は「大豆の輸出」。昨年はアルゼンチンとブラジルの大豆が不作となり南米産大豆価格が高騰。割安となった米国産大豆の買いが増えたのです。買い手は主に中国。米国から中国への大豆輸出が一時的に膨らんだことを反映した結果でした。ということで、前回分の+3.5%は下駄をはいていた可能性があり、今回GDP成長率予想は+2.1%と控えめとなっています。今回の結果が予想の+2.1%よりも高ければ米景気堅調が印象つけられ、ドル高の芽もありそうですが、+2.1%よりも低い結果となれば、ドル売りとなるリスクもありそうです。

③テクニカル的な注目は、ダウ平均。トランプ大統領就任後に早速米株が崩れれば世界的なリスクオフムードにつながります。ダウ平均は1月6日に19,999.63ドルと20,000ドルの大台にあと一歩に迫りながら、就任式20日に向けて軟化。19日には19,677ドルまで下落しましたが、19,500~20,000ドルのわずか500ドル幅の中でのレンジ相場に終始しています。このレンジは12月12日以降すでに1か月にもおよび、エネルギーをため込んでいます。上方ブレイクするのか、下方ブレイクするのか。これによるマーケットのセンチメントの変化もドル/円相場には大きな価格変動要因となってくるでしょう。下方ブレイクならドル/円も下落圧力が強まってしまいます。

④米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、ヘッジファンドなど投機筋の米国債と金利先物の売り越しは先週、過去最高を記録しています。米国債の時代が終わり金利が上昇するという展望によるものですが、トランプ・ラリーによりポジションが偏り過ぎてしまいました。この売りポジションが整理される過程では、米国債上昇、長期国債利回り低下となってしまうことで、ドル安となる可能性が存在しています。同様に原油先物市場での原油の買い越し幅が過去最高レベルにまで積みあがっています。こちらもポジション整理が起きれば原油の急落につながるリスクを孕んでおり、その場合、米株の下落も覚悟しなくてはなりません。

2017年大局では日米の金融政策が真逆であり金利差拡大の方向にあるため、ドル高相場になると思われますが、足元では「トランプ・ラリー」による修正警戒も気がかりです。以上のポイントを抑えてニュースをチェックしておきましょう。


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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