マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
中国政府は、2014年11月に、隣接するアジア諸国から陸路、海路によりヨーロッパまでを結ぶ経済圏構想「一帯一路」を提唱し、関係国に同構想への支持を呼びかけています。
「一帯」は中国西部から中央アジアを経由してヨーロッパにつながる陸路を、また「一路」は中国沿岸部から東南アジア、スリランカ、アラビア半島沿岸部からアフリカ東岸を結ぶ海路を指し示しています。同構想には北極海航路や北米航路も含まれており、中国を起点に世界規模で経済活動と交流を活発化させることを目指しています。
同構想の一環として、中国から中央アジア、ヨーロッパ大陸を経由し英国のロンドンに至る国際定期貨物列車の運行が始まりました。
第一便は、中国中部浙江省の義烏を出発し、カザフスタン、ロシア、ドイツ、フランスなどを経由した後、英仏海峡トンネルを通り、12,000㎞の道のりを経てロンドンに到着しました。
義烏は、上海の南西に位置し、大規模な日用品卸売市場がある中国東部で最大の物流基地となっています。日本の100円ショップで販売されている中国製品のほとんどが、ここを経由して輸出されているとも言われています。
ロンドンへの第一便は、主に衣料品や雑貨を積載し、18日間をかけて到着したそうです。
一編成の列車が運搬できるコンテナは200個程度で、大型貨物船の100分の1に過ぎませんが、最大の強みは速達性とコストのバランスです。マラッカ海峡とスエズ運河を経由する海路に比べ、輸送に要する日数は半分で済み、また航空輸送と比べた場合のコストも半分で済むそうです。
輸送する貨物の種類によっては、海路、空路に対する優位性を得ることができそうです。
一帯一路構想に基づき、中国は関係諸国での貨物輸送網の整備のため、インフラ投資を進めています。
沿線の都市、中でも景気の冷え込みが続くヨーロッパの各都市は、中国との経済交流の活発化に大きな期待を寄せているそうです。
中国にとっても、米国でトランプ大統領が就任し、今後米中関係に波風が立つとの懸念が広がる中、輸出先としてのヨーロッパ諸国への開拓は経済成長とリスク分散のためには急務となっています。列車の運行が安定的に行われ、往来が活発になれば、Win-Winの関係を築くことができそうです。今後に要注目です。
中国からヨーロッパへの鉄路は、今回の中央アジア経由が最短距離ですが、他にモンゴル経由シベリア鉄道への路線と、東北部、旧満州から同じくシベリア鉄道を経由する路線があり、北京‐モスクワ間の旅客列車に加え、貨物列車も頻繁に運行されています。
海路と空路の中間を行く陸路があることは中国の大きな強みのように見えます。日本も、ヨーロッパとの物流を海路中心に頼るのか、あるいはロシア極東からのシベリア鉄道ルートなどの活用を図るのか、戦略の明確化が求められているように思えます。
経済成長の減速がささやかれる中国ですが、やはりスケールは大きいと感じさせられる話題でした。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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