第245回 ドット・フランク法撤廃でさらなる強気に?!【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第245回 ドット・フランク法撤廃でさらなる強気に?!【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

ドル/円相場は111円台にまで下落、足元の為替市場はトランプ大統領から日本の為替政策批判が飛び出したことにナーバスとなっており、今週2月10日に予定されている日米首脳会談に警戒が強まっているようです。

トランプ大統領は1月31日、製薬会社幹部との会合で「日本は通貨安誘導を繰り広げ、米国はばかをみている」と日本の為替政策を厳しく批判しました。今週の日米首脳会談では、麻生財務大臣を同行させるよう米国側から要請があったほか、為替政策の事務方トップである財務省の浅川財務官も同行することが明らかとなっており、日本の金融・通貨政策に圧力がかかるとの見方から円高を予想する向きも増えてきた印象です。「そもそもトランプ大統領の保護主義政策はドル安政策への転換を示唆しており、トランプラリーは大統領就任とともに終焉する」という予想も根強くありましたが、果たして本当にドル高円安、日本株高のトランプ相場は終わってしまったのでしょうか。

今週はトランプ大統領と安倍首相の会談の内容が気がかりでリスクを取り難い相場展開。積極的な買い手不在となる中で、短期筋がドル/円相場の112円ちょうどにあるテクニカル的な節目を崩そうとドル/円の売り仕掛けをしてきた印象です。(※トランプラリーで上昇したドル/円相場。101円台から118円台までのフィボナッチリトレースメント38.2%調整が112円ちょうどあたりに位置していました)

しかし、50%押しである110円近辺では下げ止まるのではないか、と思われます。なぜなら米国株ダウ平均は2万ドルの大台に乗せて高値を更新しており、米国はリスク選好相場が継続しているからです。先週末に発表された1月の雇用統計の結果は「平均時給」の伸びが予想を下回っていたことに失望し、米国の早期利上げ観測が後退したことが指摘されていましたが、緩やかな金利上昇は株式市場にはポジティブ。金利の急騰が株式市場を崩すリスクが根強く警戒されていますが、この懸念が後退したことが一因です。

加えて、トランプ大統領が「金融規制強化法(ドッド・フランク法)」の見直しに向けた大統領令に署名したことも見逃せない大きなニュースです。

ドット・フランク法とは2010年7月、オバマ大統領の署名により成立した米国の金融規制改革法のことです。サブプライム・ローンなど、金融機関がリスクの高い取引に走ったことが2007年サブプライム・ショック、そして2008年のリーマン・ショックにつながった教訓から誕生した金融規制強化法で、金融機関に高い自己資本比率を求め、銀行がリスクのある取引を行うことへの規制(ボルカー・ルール)などを課しました。その他にもデリバティブ取引などの透明性向上など全16編にわたる膨大な量の包括的な金融規制法で、この法律を遵守する為に必要とされるコストも嵩むことで該当金融事業者の業績を圧迫してきました。そのコストが無くなるだけでも金融機関にとっては利益向上に繋がるグッドニュースですが、規制撤廃で銀行、証券会社など金融機関は、リスクを取った運用、運営が可能となることで金融市場の活性化に繋がるとの期待が大きく、日米の証券会社や銀行などが恩恵を被るとして金融関連銘柄は大きく動き出しています。米国で業務を展開する日本のメガバンクなどもこの規制の対象であったため、日本の銀行、証券銘柄にもプラス材料ですので日本の株式市場は金融関連銘柄の好調が続くと思われます。

ということで、トランプ大統領が掲げる規制緩和、大幅減税、インフラ投資などの政策は基本的にはドル高、株高を推進するものであり、大きな流れはドル/円相場上昇、米株上昇、日本株上昇であると思われます。しかしながら、足元で為替市場が警戒しているのもそのドット・フランク法撤廃に向け大統領令に署名をしたトランプ大統領その人であるというのは面白いですね。今週の日米首脳会談に向けて、日本の為替政策へクレームがないかとナーバスになっているドル/円相場ですが、為替政策への圧力がなければ市場のムードは一変してリスクテイクに向かうとみています。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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