第246回 為替相場はトランプ大統領が動かしているワケではない?!需給に注目【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

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第246回 為替相場はトランプ大統領が動かしているワケではない?!需給に注目【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

トランプ政権から為替政策への圧力が出れば円高リスクだと指摘された日米首脳会談ですが、警戒が強すぎたようです。トランプラリーで118円台にまでドル高円安へと上昇していたドル/円相場は、首脳会談前に111円台にまで下落、大きく修正を強いられていましたが、週明けには114円台までドル高円安が進行する展開となっています。

米国大統領選でトランプ氏が勝利して以降、金融市場はトランプ大統領の一挙手一投足に神経質に動かされている印象ですが、冷静に市場を眺めてみると綺麗に「季節要因」通りに動いています。トランプ氏の発言がドル/円市場で数十銭の値動きのきっかけになっていることは事実ですが、しかし、大きなトレンドを形成するものではありません。ドル/円相場の需給が年間を通じてどの時期に出やすいのかということが最も重要で、これが相場のトレンドを形成しているのです。

例えば株式市場。ウォールストリートには「Sell in May」という格言があります。「5月に相場が下がる」という意味として使われることが多いのですが、この格言には続きがあります。「 Sell in May and go away; don't come back until St Leger day. 」5月に売ってLeger day(9月第2土曜日)まで戻って来るなということですが、つまり、「相場が下がり出す5月に売り、相場が上がり出す9月に買え」ということを意味しているのです。至極シンプルに言えば、秋に仕込んで春に売れば儲かるというサイクルを指しているのですが、過去のダウ平均の値動きを検証すると、驚くほどそのサイクル通りに株価が動いていることが確認できます。例えば昨年2016年を例にとっても原油安、チャイナショックに揺れて1~2月に安値を付けた株価は4月20日に向けて上昇しトップアウト、6月にはブレグジット騒動で再び大きく下落に見舞われます。その後反発するも大統領選挙を控えてほとんどレンジ相場が続きましたが、11月8日からトランプラリーがスタート。現在に至っています。2016年は様々なテールリスクが指摘された1年でしたが、格言通りに動いていれば、大きな利益を手に出来ていました。この格言は、米国のヘッジファンドの決算や、それに伴う解約の期限などの要因が関係しているのですが、要するに「相場の需給」が相場のトレンドを形成している、ということですね。

同じように為替市場にもカレンダー的な「季節要因」が存在します。為替市場においては輸入筋や輸出筋などの実需家による貿易決済が大きなトレンドを形成します。月末や期末、年度末などの実需家(企業)の決算期には、資金調達や外貨の円転が起こるため、ドル/円相場は動きやすくなります。また日本の対外純資産は世界一。日本から海外へ投資された膨大な資産が決算期に日本に戻される際、外貨(ドル・ユーロ)から円に換金されます。こうした資金の本国回帰は円高圧力となりますが、1~3月は日本で販売されている多くの投資信託の決算月であることで、この期間には海外に投資されていた投信資金が日本に回帰する圧力が大きくなることが指摘されているほか、クーポンの支払いなどによる円転が起きやすく、円高になりやすいとされています。また、長くアノマリー的に指摘されているのが米国債の利払いによる円高圧力。日本は巨額の外貨準備を保有する国ですが、その大部分はドルや米国債資産です。また機関投資家らも多くの米国債を保有しています。

2年以上の償還期間の中期国債や、10年以上の長期国債はほとんどの償還、利払い時期が2月15日、8月15日であるため、この時期は円に換える圧力が生じ、円高になりやすい、、、というのですが、実際にはスワップ取引で受渡日を調整しており15日に集中するようなものではないというのが実情のようですし、償還されるとはいえ、それがそのまま再投資されることが多いため、為替市場での円高圧力としては大きくないとの指摘もあります。また、米国債利回りも過去と比較すれば低下しており、過去警戒されたほどの利払い金額ではなくなっているとの指摘もあるようですね。

為替市場ではこうした、実需家らの投資や決算が底流で価格を形成しています。米国債の償還に関しては過去と比較してそれほどの円高材料ではなくなったと言われていますが、それでも、それがアノマリー化して2月円高論というのは根強く残っています。円高になりやすいとされる時期に、トランプ大統領のリスクを重ねて円高方向へと仕掛けてきた短期筋らがいたことも、事実あったかと思いますが、円高リスクが高いとされる時期を乗り越えれば、再びドル高のトレンドとなっていくものと見ています。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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