第201回 大気汚染対策強化のために20都市が連携 【北京駐在員事務所から】

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第201回 大気汚染対策強化のために20都市が連携 【北京駐在員事務所から】

春節(旧正月)明け後しばらくの間、北京では青空が広がり快適だったのですが、先週末から大気汚染が戻ってきました。
今日の汚染指数は300前後で、「極めて不健康」から「危険」というレベルです。予報では、今日が汚染のピークとされていますが、果たして明日以降改善されるのかどうか心配になります。

中国政府で環境保護政策を担当する環境保護部は、大気汚染の軽減を目指し、このほど、北京市及び周辺地域の計20都市に、汚染対策を加速し、かつ汚染が深刻化した際には、これらの都市が連携して、工場の操業停止等の緊急対応を行うよう求めました。
北京市には、東に隣接する河北省からのルート、南東に位置する天津市や山東省からのルート、ならびに南西方向の河北、河南の両省からのルートという3つの汚染物質流入路があるとのことで、これら地域の20都市が対象となりました。
内訳は北京市、天津市、河北省の8都市、山東省及び河南省の各5都市となっています。
北京市は、北と西に山がそびえ、東と南から流入した汚染物質が、ちり取りにごみを集めるような形で集積する地形になっているため、特に汚染が深刻になっています。

環境保護部は、これら20都市で汚染の状況を監視する地点を増やし、また高さ45m以上の煙突を持つ工場1,239ヶ所を対象に、基準を超える汚染物質の排出を行っていないかについての監視を行いました。
環境保護部の担当者によると、この監視強化により、汚染物質の排出が劇的に減少する効果が見られたとのことです。
加えて、汚染源として悪名高い鉄鋼業を対象に、生産量の削減等の措置を講じています。

それでも、環境保護部の責任者は、一部都市の政府は生産活動への影響を気にして動きが鈍く、緊急対応の遅延や不足を招いていると指摘しており、今後は同部において、大気汚染対策への取組状況に基づき、各都市政府の幹部や担当者の評価を行うと述べています。
「信賞必罰」がどの程度効果を挙げるのか、注目されるところです。

大気汚染対策に広域連携が必要なことは疑いのないところですが、今回対象となった北京市周辺地域でも、経済発展の水準に差があり、「まずは生産活動優先」と考える地方政府も多いのが現状です。この「温度差」が汚染対策の効果を挙げるうえでの阻害要因になっています。
また、工場に加え、建設現場や自動車の排ガスなど汚染源は多様で、自動車を見ても、乗用車中心の北京市とトラック等がより多い周辺都市では、対策も同様という訳には行きません。
さらには、今回対象外となっている、河北省の西の山西省や内蒙古自治区から飛来する汚染物質も増加していると言われており、様々な対策を講じても劇的な改善は難しい状況となっています。

中国全土を見渡しますと、汚染が悪化している地域の方が多く、大気汚染問題は今後も政府にとっての重荷となりそうです。一方、汚染対策の経験が豊富な日本企業にとってはビジネスチャンスが大きいものと思われ、今後の活躍に期待したいところです。

環境保護部の施策は一定の効果を挙げるものと思われますが、問題の根本的な解決には程遠いと感じざるを得ませんでした。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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