第247回 米株上昇、リスクオン相場でもドル/円が上がらないワケ【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

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第247回 米株上昇、リスクオン相場でもドル/円が上がらないワケ【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

米国株が史上最高値更新を続ける中、ドル/円相場は112円台にまで円高ドル安が進行しています。通常のリスクオン相場なら米国株が高ければ、ドル/円相場も強い展開となるはずですが、なぜドル/円相場は上がらないのでしょうか。

◆米株堅調も日本株の上値が重い

東芝は決算期末の今年3月末に債務超過を回避できなければ、8月1日付で東証2部に降格されることが指摘されていますが、2015年に発覚した不正会計問題によってすでに特設注意市場銘柄に指定されているため、公募増資を行うことが困難な状況にあります。特設注意市場銘柄に指定された2015年9月15日から1年6ヶ月以内に「内部管理体制確認書」を提出し状況改善を報告する義務があるのですが、仮に東証の審査で内容不十分だと判断された場合は上場廃止となる可能性も孕んでいます。機関投資家らは日経225やTOPIXなどのインデックス・ファンドで株式を運用していますが、連動性を担保するために株価指数の構成銘柄をそのシェアに応じて保有しています。東芝株を保有していた複数の機関投資家らは、東芝に対して損害賠償請求訴訟の準備に入っているという報道がありますが、GPIFはすでに昨年130億円もの損害賠償請求を求めて提訴しています。つまり、東芝株下落は東芝単体の問題ではなく、東芝株を保有していた機関投資家らの資産を圧迫しており(個人投資家も同じですね)日本株市場全体の問題です。東芝問題が日本株市場の上値を抑えてしまっている可能性は否定できず、日本株軟調がドル/円相場の上値を抑えてしまっていると言えるでしょう。

◆停滞し始めた米国金利上昇~警戒される米債ショートポジション

14日、イエレンFRB議長は議会証言で3月利上げの可能性を排除しないとしたタカ派的発言を行いました。この発言を受けて米国債利回りは大きく上昇したものの、勢いはすぐに失速。足元では3月の利上げの織り込み度は上がってきていません。米国債10年物利回りも2.5%前後で膠着してしまっています。つまり、米国株が史上最高値圏にあるのに、債券市場にも一定の資金流入があるということなのですが、もう一つ警戒されているのが、米国債のショートポジション。ヘッジファンド勢らの米国債先物市場でのショートポジションが積みあがっていることが指摘されています。米10年債のネットショートポジションは
2月7日の30万4,577枚から2月14日時点では34万1,524枚に4万枚も増えています。先物市場に入っている資金は、いずれこのポジションを解消する必要に迫られるという性質のものです。いずれ債券売りのポジションが買い戻されるということは、債券価格の上昇を促す可能性があり、債券利回りを低下させます。対して、現在リアルマネーと呼ばれる機関投資家らは、債券ロングポジションを積み上げています。(先物市場ではない)一定の米国債券買いがあるために利回りが上昇しない状況に陥っているのですが、にもかかわらず、いずれ反対売買にて決済を強いられる先物市場で債券ショートポジションが積みあがっているという状況にある、、、ということ。先物市場の債券ショートポジションが一斉に買い戻され、米国債利回りが低下すれば、日米金利差縮小からドル/円相場は下落を強いられることとなってしまいます。

2月28日にトランプ大統領の議会演説が予定されていますが、具体的な政策が出てくることを期待していると見え、米株市場は堅調地合いが続いています。議会演説が膠着しつつある日本株やドル/円市場にとって次なる手がかりとなるのかもしれません。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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