第202回 男性の結婚難はますます深刻な問題に 【北京駐在員事務所から】

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第202回 男性の結婚難はますます深刻な問題に 【北京駐在員事務所から】

中国では、農村部での労働力としての期待など様々な理由により、毎年誕生する新生児の男女比が、諸外国と比べ歪になる(男児が女児よりも多い)状況が続いています。
2004年の新生児は、女児100人に対し男児121.2人に、また2009年の新生児は、女児100人に対し男児119.5人になっていました。ちなみに日本では女児100人に対し男児105人程度で安定して推移しています。
最新の統計となります2015年分については、若干比率が改善されましたが、それでも女児100人に対し男児113.5人となっています。中国政府で人口政策を担当する国家衛生及び計画生育委員会によると、中国は世界で最もこの不均衡が大きいそうです。

このような状態のまま、新生児が成長し成年に達し、さらには結婚適齢期を迎えることで、中国では男性の結婚難が深刻な社会問題になっています。
天津市の有力大学である南開大学の教授の推計によると、1980年から2015年の間に生まれた世代では、男性が女性よりも3,050万人多いそうです。
同教授は、今後も男女の不均衡は続くと予想し、女性の数を上回る男性は、終生独身となることが運命づけられていると述べています。
さらに、出生数の不均衡に加え、結婚を望まない女性が増えていることで、さらに終生独身とならざるを得ない男性が増えると悲観的な見通しを示しています。

2015年まで続いた一人っ子政策のもとでは、主に稼ぎ手としての期待から「子を一人しか持てないのであれば男児を」と考える親が多く、これが不均衡を生む要因の一つになっていました。
政府の予想では、昨年、一人っ子政策が廃止されたことで、今後は男女の不均衡が縮小に向かい、2030年の新生児については、女児100人に対し、男児が107人程度と、正常な水準に近づくとされています。
それでも、現在結婚適齢期にある、あるいは近い将来に適齢期を迎える男性を救う有効な解決策はありません。
南開大学の教授は、一つの方策として、ベトナムやウクライナなど、他国からの花嫁の受入を行うことが考えられるとしています。
一時期、結婚難に直面した日本の農村部の男性が、東南アジア諸国の女性を花嫁として受け入れたことがありましたが、これと同様です。
もっとも、同教授は、「これで一部の男性は救われるかもしれないが、3,000万人は中規模の国家の総人口に匹敵する数で、余りにも多い」と述べ、手詰まりを認めています。

中国では、年金など社会福祉制度の整備が遅れており、「老後は子を頼る」という考え方が根強く残っています。
終生独身で子を持てない人にとっては、貯金等で老後に備えるしかないのですが、農民など低所得者には日々の生活で精一杯という人も多く、将来、資産もなく、また子を頼ることができない高齢者が増加し、新たな社会問題となることも危惧されます。
一人っ子政策が、その廃止後も長く負の影響をもたらすという訳です。

先日のNHKテレビで、「春節の帰省時に同行してくれるレンタル彼女」というビジネスが人気というニュースを見ました。
帰省の際に、両親や親族から受けるプレッシャーを逃れるため、一ヶ月分の給与を超える金額を支払い、交際中の彼女であるかのように振舞ってくれる女性を伴い、実家に赴くそうです。
全くの一時しのぎに過ぎないのですが、そのために大金を費やすというところに、独身男性がおかれた状況の厳しさが垣間見えます。
地方在住者、特に高齢者の「結婚観」は、恐らく昭和の日本と同じようなものなのでしょう。

改めて、人口を政策でコントロールすることが困難であり、かつ多くの副作用を伴うものであることを痛感させられました。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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