マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
みなさん、こんにちは。『今どき株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。株式市場は底堅い展開が続いています。マレーシアでの北朝鮮要人の暗殺など国際政治面でのきな臭さが漂ってきましたが、米国株式市場の最高値更新や国内景気の堅調が下支え要因となっているようです。ただし、その反面、株価を引き上げて行くほどの新たな好材料もまた見当たらなくなってきました。トランプ景気への期待もかなり織り込まれてきたようにも感じています。徐々に値動きの小さな持合い展開となりつつある以上、当面は何らかの材料をきっかけに株価が大きく変動する可能性があると予想します。
さて、今回はプレミアムフライデーを取り上げてみましょう。丁度、先々週末に、初めて実施されました。みなさんの中にもプレミアムフライデーで早帰りをされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。実際、多くのイベントが設定されたり、午後の早い時間からオープンする外食店舗もあり、ゆったりとした時間を満喫された方も少なくないと思います。このプレミアムフライデー(以下、プレ金)については、予てから居酒屋チェーンや旅行会社などが関連銘柄として株式市場で注目されてきました。ただ、本コラムでそれを繰り返しても面白くありません。そこでもう一歩思考を進め、その初回の動向から改めてこのプレ金の影響や関連業界について考えてみることとしましょう。
そもそもプレミアムフライデーは、低迷する個人消費を喚起する目的で政府や経済界から提唱されたもので、財布の紐を緩めやすい給料日前後となる月末金曜に設定されました。15時退社が目途とされたのですが、これには昨今の残業問題などのガス抜き施策といった意味合いもあったように、筆者は感じています。年配の読者の中には、かつて土曜が「半ドン」だった時代をご経験の方もおられるかもしれません。イメージはこの半ドンの再現といっていいでしょう。当時は同僚とどこかに出かけるといったことが多かったように思いますが、現代では自分のため、家族のために時間やお金を使ってください、という狙いとなります。ただし、初日の動向を見る限りは、「仕事が終わらない」「関係ない」といった声も少なくなく、やや肩透かしの結果となったように思われます。もちろん、政府や経済界としてはそんなことは百も承知で、徐々に「早帰りの日」として定着されればよい、と考えているのだと想像します。クールビズも最初は奇異な感じがありましたが、今や完全に定着しています。
しかし、筆者はプレ金の「消費喚起」という点での効果に関してはやや懐疑的です。本来、消費拡大には、所得の拡大か将来不安の解消が必須です。早帰りだけでは、この必須条件を満足しないと考えるため、です。確かに余暇への時間は生まれるのでしょうが、そこで消費した分は後日の消費を抑制することに繋がり、結果として消費総額は大きく変化しないのでは、と思うのです。クールビズはエコ化の推進が目的であり、また消費者に新たな出費負担を課すものでもありませんでした(一部、クールビズ用の洋服支出はありましたが)。同じ政府や経済界提唱でも、クールビズとはそこが決定的に違うように思います。当然ですが、景気拡大によって所得拡大が浸透すれば、消費拡大効果が期待される可能性はあります。ただ、それはプレ金があってもなくても関係はない、と云う事もできます。いずれにしても、プレ金による直接的な消費喚起効果には限界があると考えます。
では、消費総額一定のままで自由にできる時間だけが増えたら、みなさんは何にお金と時間を使いますでしょうか?筆者は、むしろ外食より内食が増えるのでは、と考えます。まず、時間があるわけですから、食事を作る余裕ができます。人によっては手の込んだ料理を楽しむ方もおられるでしょう。内食であればコストも抑制できますから、そこでお金が浮き、それを他の消費に充てることも可能となります。消費総額は一定を維持できるという算段です。この時に新たな消費に充てられる分野は、それこそ外食かもしれませんし、旅行かもしれません。ただ、それらは個々人の生活スタイルによって幾万通りにも分散するでしょうから、経済効果としてはかなり希薄化してしまう可能性が否めません(そもそもプレ金は月一日なので、その点でも消費喚起効果は限定的なのですが)。であれば、むしろ消費余力を高める内食関連にこそプレ金効果が見込まれるのでは、と連想するのです。
そう考えると、やはりプレ金のインパクトは「仕事を終えてさっさと退社する」という価値観の醸成にこそあるように感じます。これが浸透すれば、プレ金に限らず、毎日において時間の余裕を得ることに繋がるのですから。
コラム執筆:長谷部 翔太郎(証券アナリスト)
日系大手証券を経て、外資系投資銀行に勤務。証券アナリストとして、日経や米Institutional Investors誌などの各種サーベイで1位の評価を長年継続し、トップアナリストとして君臨する。外資系投資銀行で経営幹部に名前を連ねた後、現在は経営コンサルティング会社を経営する。著述業も手がけ、証券業界におけるアナリストのあり方に一石を投じる活動を展開中。著作は共著を中心に多数。
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