マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
3月のFOMCで政策金利の利上げが実施されることは「ほぼ確実」となってきました。金利先物市場での3月利上げ確率は80~90%にまで上昇。その前の週の20~30%程度から急激に利上げが織り込まれたことが確認できます。ここまで市場が3月利上げを織り込んでしまった場合、利上げを実施しないことのほうがリスクとなります。今週末は3月の雇用統計が発表されますが、雇用統計の数字が余程悪くない限り3月利上げはほぼ実施されると見ていいでしょう。
では、年初からのドルの修正局面が終了し、いよいよ本格的なドル高がスタートしたと考えてもいいでしょうか。ドル円相場は118.60円がトランプラリーで形成したドル高相場の高値。3月利上げは、この高値を抜けてドル買いとなるほどの大きな材料でしょうか。
3月という季節要因を考えてみましょう。
3月は多くの日本企業の本決算時期です。3月末の締め日に向けて海外展開している一般企業が、海外で得た利益を自国通貨に換える「レパトリ」による円高傾向となることがアノマリーとされています。本決算に向けて利益を計上、あるいは損失を確定させる動きですが、日本の対外純資産は世界一の金額であることや、輸出企業による海外利益の還流が大きいということを考慮すると円高圧力のほうが大きいと思われます。このレパトリは3月限定ということでもないのですが、2月頃から期末に向けて強まるとされています。一方でドルを調達しなくてはならない輸入筋のドル買い需要も強まる時期でもあり、こうした期末までに起こる決算に絡む実需勢の売買が、為替市場では大きな存在感となってきます。
また、今年2017年に限っては3月15日のリスクが指摘されています。暴落危機というのはさすがに大袈裟かと思いますが、それなりにイベントが集中しており警戒が強まっていることは否定できません。
1・FOMC
3月利上げを織り込み進むも、気が早い市場は次の利上げへの期待が過度に高まれば、仮に利上げを実施しても、その後のFOMC声明に対する期待剥落のリスクも。
2・オランダの総選挙
EU離脱を掲げる極右政党の自由党の支持率が高まっており自由党勝利のリスク。(EU離脱~EU解体への思惑の拡大はマイナス要因)ただ、仮に自由党が勝利しても単独での過半数獲得には至らず、また主要政党が自由党との連立に 否定的であることから政権樹立は難しいとされており、大きなリスク要因ではないとの指摘も。
3・債務上限問題期限
米国は1917年に成立した公債法によって債務の上限が決められています。上限を超える債務を発行する場合は議会の承認を得なければなりませんが、トランプ大統領反対派が共和党内にもいることで、議会の承認が危ぶまれています。ただ、ムニューシン財務長官が臨時措置による期限延長を明言しており、大きなリスクにつながるとは思えませんが、何が起きるかは不透明。溜まりに溜まった米国債のショートポジションの動向も気がかりです。
※米国債ショートポジションについては前回のコラムを参照。
トランプ大統領議会演説、リスクかチャンスか
https://info.monex.co.jp/lounge/special2/2017/02/28.html
リスクイベントが多ければ、警戒が強まりリスクポジションは手仕舞われます。一つ一つの材料を検証すると、大きな問題に発展するようなリスク要因ではないと思いますが、それでも市場がリスクを大きく取りに行くセンチメントにはなりにくいと思っています。また、先週3日金曜日、イエレンFRB議長が「月内の会合で雇用と物価動向が予測に沿って進展しているかを評価し、その場合はさらなるFF金利の調整が適切になるだろう」と発言し、市場は3月利上げをほぼ確信したにもかかわらず(金利先物市場での利上げ織り込みは90%を超えた)ドル上昇が止まり、週明けからはドル売り傾向にあることも気がかり。15日の利上げ実施まではドル高で、利上げ実施後に「噂で買って事実で売り」の格言に倣ってドル高が終了するという見方もありますが、15日に集中するリスクイベントを前に、ドル買いが加速するセンチメントにはないような気がします。むしろ、買いの好機は15日が問題なく通過したところからではないでしょうか。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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