第252回 いよいよブレグジット正式交渉スタートでどうなるポンド相場【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第252回 いよいよブレグジット正式交渉スタートでどうなるポンド相場【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

ドルの上値が重くなってきています。利上げバイアスにある金融政策やトランプ政権の減税、規制緩和などのドル高政策も、すっかりマーケットには織り込まれてしまっており、マーケットに新鮮味はありません。そんな中で、ECBの金融政策もいよいよ出口模索か?!ということで新鮮味があることから、ユーロ買いに妙味あり、と前回のコラムで書きましたが、同様にポンドにもここから買い妙味がありそうです。

今週3月29日、いよいよ英国メイ首相はEU離脱に関する通知を行います。EUの基本条約である「リスボン条約」の中の「EUの加盟・離脱に関する規則を定めた第50条」に基づいたもので、この通知が行われることによって英国のEU離脱(ブレグジット)交渉が正式にスタートします。原則として通知日から2年間、2019年3月までに離脱に向けた様々な条件交渉が行われることとなります。

当たり前の話ですが、EU側としては「英国の勝ち逃げ」にならぬように厳しい条件を突き付けるとみられます。EUを離脱したほうが得だ、というような交渉結果に終われば他のEU加盟国から、ウチも離脱したいという声が上がることが予想されるためです。

①EU予算の分担金

EU加盟国はそれぞれEUの予算へ拠出しています。英国の分担金は最大600億ユーロ(約7兆2,000億円)ですが、英国がEUを離脱してしまうと、EU側は英国からの分担金がなくなってしまいます。そんな勝手は許さない、ということで、EU側は、分担金支払いを保証しなければ、離脱後の通商に関する交渉に応じないという厳しい姿勢を示しています。英国としては離脱するので、今後永続的に支払うつもりはないのですが...。ユンケル欧州委員会委員長は「値引きは無い」と牽制していますが、英国内ではこうした強硬なEU側の態度に強い反発もあり、なかなか話はまとまりそうにありません...。

②EU内の英国人、英国内のEU出身の市民の権利問題

ハンガリーやポーランドなど東欧諸国から英国への移民労働者が多く、彼らの権利問題の優先度が高いとみられています。英国民がEU離脱を決めた背景にはこうした移民問題が大きく、今後の労働環境や年金、社会保障、教育へのアクセス保障などが、これまで同様に受けられるかどうかはわかりません。

議論されるのは離脱の条件だけで、通商協定は含まれないため、別途、通商協定が交渉・批准されるまで有効となる暫定的な取り決めについて交渉することとなっています。つまり、EUと英国との対立する問題をクリアしなければ、通商協定交渉に入ることができません。もし、離脱交渉が決裂した場合、WTOの規定に基づいた関税が用いられることとなり、英国の輸出入の半分を占めるEUとの貿易活動は縮小し、輸入物価上昇を招くリスクがあります。これは通貨ポンドにとって売り材料となると考えられます。

問題なく離脱交渉が進めば、マーケットは金融政策へと焦点をシフトさせるでしょう。3月21日に発表された2月の消費者物価指数(CPI)は、2013年9月以来の大幅な伸びとなる前年比2.3%上昇となりました。英国中央銀行が目標とするインフレ目標2%を上回るのも2013年以来。インフレ加速がポンドを上昇させました。英国中央銀行のインフレ目標は2%で、カーニー総裁は2月、「許容できるインフレ率には限度がある」と発言していたことから、市場では早期の引き締めが意識される結果となりポンドが買われる展開となっています。

また、3月15日の金融政策委員会では政策金利は据え置かれましたが、議事要旨では委員の一人が利上げを主張したことが明らかに。英国もそろそろ利上げが意識され始めています。ポンドの利上げもまた、ユーロ同様、マーケットには新鮮味のある材料。米国利上げはすっかりマーケットに織り込まれ米ドルの上値が重くなってきています。2017年は欧州通貨の反騰が大きくなる1年となるかもしれません。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

TwitterAccount
@hirokoFR

マネックスからのご留意事項

「特集2」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧