マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
「爆買い」の勢いには陰りが見えるとも言われていますが、訪日旅行者を含め、海外旅行に出かける中国人の数は増加の一途をたどっています。
また、春節(旧正月)の帰省ラッシュや、10月初めの国慶節(建国記念日)連休の国内有名観光地の混雑も凄まじいもので、北京在住の日本人の間では、「春節や国慶節に国内旅行はダメ」というのが半ば常識になっています。
人の移動が活発になれば、スーツケースや旅行カバンの市場も成長します。コンサルティング会社の推計によると、中国の旅行用カバンの市場規模は昨年2016年に前年比8%増の309億元(約5,100億円)に達し、世界最大の市場になっています。
夜行長距離列車やロシア、北朝鮮などへの国際列車も発着する北京駅で乗客の様子を見ますと、大きな麻袋や段ボール箱もまだまだ健在なのですが、最近の傾向としては、デザインやファッション性をより重視したものや、軽くて耐久性に優れた高級品の人気が高まっているそうで、世界の有名メーカーが中国市場に熱視線を注いでいます。
マーケティング調査会社によると、高級スーツケースの市場では、機能を高めた新製品が続々登場しているそうで、例えばGPS機能を搭載し、盗難、紛失の際に所在を追跡できるものや、自走式で所有者の後ろをついて動くものまであるとのことです。
自走式となれば、メカ(バッテリーを含む)がそれなりの重量になるでしょうから、スーツケースとしての容量が制約され、本来の機能が損なわれてしまうようにも思われます。どの程度のニーズがあるのか、ちょっと興味がわくところです。
上述のような変り種商品(?)はさておき、「軽くて丈夫、容量も大きくかつファッショナブル」なスーツケースは誰もが欲しくなるものです。
ドイツの有名ブランドRIMOWAは、中国に進出して10年目になりますが、経済成長の減速にもかかわらず、売上は順調に伸びているそうです。
同社の極東部門の責任者は、中国の二線都市、三線都市では、同社のブランドや商品の知名度がまだ高くないため、今後新たなユーザーを獲得できる余地が大きいと述べ、自信を示しています。
同社は近年ネット通販にも注力しており、中国全土の消費者への訴求を図っています。
Rimowaのほか、米国のSamsoniteも近年売上を伸ばしているとのことで、中国の高級スーツケース、旅行カバン市場は今後ますます熱気を帯びそうです。
景気の良い話が飛び交っていますが、中国全体ではまだまだ低価格品を使用する人が多く、中国の旅行カバンの2015年の世帯当たり年間消費額は2.9米ドル(約320円)で、日本の32.3米ドル(約3,600円)あるいは北米の24.8米ドル(約2,800円)に大きく水をあけられています。
逆に見れば、その分、今後の成長余地が大きいということになります。
一時期よりは落ち着きましたが、東京から北京に戻る航空便に乗る際には、最近でもしばしば「頭上の荷物入れスペースの争奪戦」に遭遇します。
これに備えるためか、中国人乗客は搭乗前、かなり早い時間から搭乗口に列を作る傾向があり、最近、私はこれに巻き込まれたくないということで、極力機内持込の手荷物を減らし、最後の方で搭乗するようにしています。
また、預け荷物(受託手荷物)の数や大きさについても、中国人乗客の中には時々凄い人がおり、空港のチェックインカウンターで揉め事になっている場面も頻繁に目にします。
ある意味、中国の「力強さ」が感じられる光景です。海外旅行者数が減少傾向にある日本との対比が際立ちます。
スーツケース、旅行カバンを巡る話題から、またまた中国市場の大きさと成長性を認識させられることとなりました。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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