マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
北京の空の玄関口である首都空港は、旅客数で中国第一位、世界でも第二位の大空港です。
上海や台北には空港が複数あり、日本との間にLCC(格安航空会社)便を含む多くの便が運航されていますが、北京では首都空港の他に市の南部に小規模の空港があるものの、国際線の全てと国内線のほとんどが首都空港発着となっており、発着枠に余裕がなく混雑も酷いものになっています。
大気汚染など悪条件が重なると、一挙に遅延が拡大する悪循環に陥っています。
3つあるターミナルのうち、最も新しい第三ターミナルは、2008年の夏季オリンピック・パラリンピック北京大会の開催にあわせ開業した比較的新しいものですが、それでも多くの利用客に酷使され、トイレなど一部の設備に疲労感が見えます。
3本ある滑走路も同様で、多くの便の発着により酷使されている一方、24時間運用されていることも影響し、補修が追い付かない状態だそうです。
とは言え、傷んだ滑走路を使用することは事故を誘発する恐れがあります。空港当局は、抜本的な対策として、現在発着便の4割が使用している第二滑走路を4月2日(日)から29日(土)までの間運用停止とし、集中的な補修を行っています。
この間、定期便の便数で2割程度、提供座席数で10~15%程度の削減が必要になるとのことで、混乱が生じることが懸念されています。
空港当局は、この間の航空便を予約している利用客に対し、航空会社に欠航等の有無を確認するよう促しているほか、悪天候等が生じた場合に、更なる遅延や混乱が生じる恐れがあるとして、利用客に理解を求めています。
また、現在首都空港を出発する便は、離陸までの地上走行と待機に平均で27分間を要しているのですが、第二滑走路の閉鎖中は、この時間が更に長くなる恐れがあるとして、利用客への周知とともに、早目の空港到着を呼びかけています。
第二滑走路は、首都空港が開業した1958年より供用されており、1996年に全面的な維持補修が行われましたが、その後20年以上を経て、舗装の剥がれが生じるなど危険な状態になっています。
今回の補修は面積20万平方メートル(東京ドーム約4個分)に及び、総工費は1.72億元(約27.5億円)に達する見込みです。
国際線は優先的に扱われ、欠航の対象となるのは国内線、かつ便数の多い幹線が中心になるものと思われますが、それでも平時に比べれば遅延等のリスクは高く、利用客は神経を使わされることになりそうです。
大幅な遅延や欠航等、トラブルが起きないことを祈りたく思います。
一時の勢いは失われたと言われますが、中国人の海外旅行熱は衰えておらず、各航空会社は新規就航路線を続々と開設しています。
2019年には、北京市南部の大興区に新空港が開業する予定で、北京の空は新たな時代を迎えます。現在慢性的な供給不足に陥っている北米向け路線の増便が予想されるほか、欧州の航空会社も新規就航や増便を狙っていると言われ、日本の相対的な地位の低下につながることも懸念されます。
将来、たとえば九州などから欧州への旅は、北京乗継がメインルートになるのかもしれません。需要あるところ、また成長が見込まれるところに供給が向かうのは当然とはいえ、淋しさを感じずにはいられません。
北京首都空港の滑走路補修のニュースに、中国の活力を感じさせられてしまいました。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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