第209回 上海市民の平均寿命は世界トップレベルに 【北京駐在員事務所から】

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第209回 上海市民の平均寿命は世界トップレベルに 【北京駐在員事務所から】

上海市政府が先月27日(月)に発表した統計によると、昨年2016年時点での市民の平均寿命は83.2歳でした。
以下、いずれも2015年時点のデータとの比較になりますが、中国全体の平均寿命76.3歳を大きく上回り、長寿国として知られる日本の83.7歳や、スイスの83.4歳に迫る水準になっています。
男性の平均寿命は前年から0.36歳延びて80.83歳に、また女性は同じく0.52歳延びて85.61歳になりました。
同市の広報室は、平均寿命が過去13年間に渡り、先進国並みの水準を維持していると述べています。

寿命が延びれば高齢化も進みます。昨年末の時点で、同市の60歳以上の人口は458万人に達し、総人口の31.6%を占めています。
中国全体での割合は16.7%ですので、2倍近い水準です。
80歳以上の人口は80万人近くに達し、100歳以上の市民も2,000人近く居住しているそうです。

ここまで高齢化が進むと、介護あるいは日常生活のサポートを、誰がどのように担うのかが深刻な問題となります。
中国では、伝統的に老親が子を頼ることが一般的で、高齢者の多くが自宅で、子の支援を受けながら生活したいと考えています。
しかしながら、子供世代では夫婦共働きが普通で、また一人っ子政策の影響で夫、妻それぞれの両親、合計4名の世話を一手に担う夫婦も多くなっています。
そのため、施設への入居を含め、様々な介護サービスを利用する高齢者が増加するものと見られ、関連業界は市場の拡大に期待しているそうです。

60歳以上の上海市民1,110名を対象に、研究機関と大学が共同で行ったアンケート調査の結果によると、回答者の60%以上が在宅でのケアサービスを望んでおり、また11%が入居型の施設を希望していました。
まだまだ在宅志向が強いとは言え、今後は施設への入居を考える高齢者が増えることが予想されます。
上海市政府も、入居型施設の増設に加え、それらの施設がショートステイやデイサービスを提供することを奨励しており、現在700ヶ所ほどの施設のうち73ヶ所で通所型のサービスを提供しているそうです。
日本では、特別養護老人ホームの供給不足による「入所待ち」が問題となる一方、デイサービスなど通所型のサービスでは利用者の獲得競争が起きている等、サービスに需給のミスマッチが生じていますが、中国の高齢者が、今後各自が望む形で適切なサービスを受けることができるよう、政府ならびに関連業界の努力が求められるところです。

中国というと、空気や水の汚染、あるいは食品への異物混入など、健康に悪い話が多いのですが、実際には都市部の平均寿命は先進国水準に達しています。
中華料理や漢方(医食同源)が健康に良いのか、乳製品の摂取が少ないことが影響しているのか、あるいは退職年齢が若く、長い老後を健康的に過ごすためのノウハウが充実しているためか、いろいろな要因が考えられます。
今後は核家族化、厳しい住宅事情、食の欧米化など、穏やかな老後のためには逆風となる要因が増してきそうですが、多くの高齢者が穏やかな老後を過ごせるよう、願いたいと思います。

先進国と発展途上国が同居する中国の現状を再確認させられる話題でした。=====================================

コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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