マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
中国では、伝統的に牛乳や乳製品を摂取する習慣が無く、中華料理にもバターや生クリームが用いられることはありません。
香港などで供される「ロブスターのチーズソース」は創作料理になります。遊牧民であるモンゴル族などの間では、羊や山羊の乳を使ったミルクティーを飲む、あるいは乳からチーズを作る等の習慣がありますが、北京などでは豆乳が多く飲まれています。
真偽のほどは不明ですが、マクドナルドのチーズバーガーを食べて、初めてチーズの味を知る人も少なくないと聞きます。
それでも、若年層を中心に食の洋風化が進み、今ではスーパーマーケットに牛乳、バターやチーズなどが数多く並び、日本と同じような状況になっています。
また、面白いのはヨーグルトの品揃えで、「飲むヨーグルト」を中心に国産品、輸入品あわせ多種多様な商品が販売されています。健康に良いと評価されているのでしょうか。
消費が増える一方、中国では長いこと牛乳や乳製品の市場が小さかったため、生産体勢が未だに弱く、国内生産が需要に追い付かない状況となっています。
そのため、海外からの輸入が増加しており、今後もこの傾向は続くと見られています。
日本の農林水産省に相当します中国政府農業部の発表によると、中国は今年2017年に前年比11%増となる1,420万トンの乳製品を輸入する見込みです。
農業部は、増加率こそ鈍化するものの、旺盛な需要を背景に輸入増は続き、2026年の輸入量は1,930万トンに達すると見ています。2016年実績の5割増となります。
国内生産も、2026年には4,470万トンに達する見込みですが、2016年からの増加率は19%にとどまります。中国国内での乳牛飼育が限定的なものにとどまる見込みであることが背景にあります。
特に粉ミルクや生乳については、一人っ子政策の廃止により新生児が増加することから需要が増加し、輸入が増加すると見込まれています。
2008年に起きたメラミン樹脂混入粉ミルク事件により、国産の粉ミルク製品の信用が失墜したことから、現在中国国内の粉ミルク市場は輸入品の流通量が国産品を上回っているのですが、政府は2015年に食品安全法を改正し、粉ミルクについて出荷前の検査を強化するなど、国産品の信頼回復に努め、輸入の急増と需給の逼迫を回避すべく取り組んでいます。
中国政府で食品安全に関する政策を担当する国家食品薬品監督管理総局は、昨年実施した粉ミルクの検査の結果、品質基準を満たさない製品の割合は1.3%であったとしています。
同総局の局長は、記者会見で「不良品の割合はわずか1.3%であった」と述べたそうですが、1.3%をわずかと評価して良いのか、消費者の判断が気になるところです。
日本が辿った道程と同様、中国でも食の洋風化と乳製品需要の増加は今後も続くものと思われます。
高血圧、高脂血症など成人病の増加も心配されるところです。
また、牛肉や大豆などと同様、将来世界の市場で需給が逼迫し、価格の上昇を招くことも心配されます。
中国の動向から目が離せない状況が今後も続きそうです。
乳製品の需要増、輸入増から、ここでも中国が昔の日本を追いかけていることが理解できるように思います。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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