第101回 「平成」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第101回 「平成」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。株式市場は腰の定まらない展開が続いています。先々週には日経平均2万円到達も時間の問題かと思えるほどの勢いがありましたが、米トランプ大統領の機密情報漏洩疑惑などをきっかけに失速を余儀なくされた格好です。個人的には、比較的好調と評価された1-3月期のGDP(年率2.2%)統計において、デフレーターが3四半期連続で前年比マイナスとなったことも、市場に冷や水を浴びせたのではないか、と考えています。これを見る限りは、まだデフレからの完全脱却には至っておらず、むしろデフレ色が再び増してきているようにも見えるため、です。当面はまだ先の読み難い相場展開が続きそうです。

さて、今回はちょっと趣向を変えたアプローチを試みてみたいと思います。採り上げるテーマは「平成」です。先日、今上陛下の退位(譲位)に関する特例法案が閣議決定され、今国会で成立する見通しとなりました。今上陛下が譲位となると、新たに即位される天皇の下、新元号が制定されることになります。30年続いた「平成」という時代はここで区切りを迎えることになるわけです。では、この平成という30年間はどういった時代だったと後世、評価されることになるでしょうか。また、読者諸兄はどのように「平成」を評価されるでしょうか、実に興味深いところです。株式投資という観点で見ても、その時代を象徴するテーマは株式市場の軸をともなっていたと考えることができるはずです。今回はそういった視点で議論をしてみたいと思います。

まず、平成の前の昭和から始めたいと思います。昭和というのは64年という途方もなく長い時代で、その間には戦前、戦後、高度成長、安定成長、バブルといった大きな社会の変化が連続する激動の時代でもありました。この昭和という時代を一言で表現することは困難なのですが、筆者はこれを「モノの時代」と位置付けたいと考えます。昭和という時代は驚異的なペースで世界的に技術革新が進展し、それに合わせて様々な産業が勃興しました。生活はモノを取得することで豊かとなり、最新鋭のモノへの期待もまた大きなものがあった時代です。それを証明するかのように、株式市場では戦前は軽工業、そして重工業、自動車、電機といった「モノづくり」の企業がその主軸を担いました。

そういった観点からすると、平成という時代はどう位置付けられるでしょうか。筆者は「ソフトの時代」と云えるのではないか、と考えています。平成時代で人々の生活は豊かになり、モノへの飢餓感は明らかに昭和時代とは一線を画すようになりました。その代わり、インターネットやこだわりの商品などに飢餓感の重点が移ったように感じます。ハードとしてのモノよりも、特別なモノ、そしてそれを如何に使うのか、という流れです。かつては豊かさの象徴でもあった自動車や住居といった高額資産も、平成時代では自ら保有せず、レンタルで済ませばよい、という価値観も生まれました。実際、株式市場の主軸にインターネットやソフト、ゲームといった企業群が躍り出ています。個別企業の浮沈はありますが、業種という大括りで見ると、昭和とは明らかに異なる勢力が生まれてきたことは間違いないと感じます。

では、次なる時代はどんな時代となるでしょうか。批判を覚悟のうえで筆者の陳腐な予想を開示するならば、「個の時代」ではないかと考えています。ソフトがこれだけ発達したことで、ライフスタイルは個人によって既に非常に多様化してきました。また、インターネットの発達により、かつてないほど「個人」の発言力・影響力・発信力が高まってきています。今後は、働き方改革などによってさらに個人のライフスタイルが大切にされるようにもなってくる可能性は高いと思えます。少子高齢化や未婚率の増加といった社会現象も、個への傾斜を否が応でも加速させるのではないでしょうか。表現は稚拙でお恥ずかしい限りですが、そういった時代を「個の時代」と位置付けたのです。これに伴い、昭和や平成の時と同様、新元号の下、個の時代に対応したビジネスは株式市場の大きなテーマになっていくと予想します。現時点ではCtoCビジネスや人材流動化に関するビジネス、趣味やライフスタイルに関連するビジネスがその主たる対象になるのではないかと想像しますが、おそらくはまだ予想もつかない新ビジネスもまた新たなスター銘柄として株式市場に躍り出る可能性は非常に高いと考えます。今後新規公開されるような新しい会社を見定める中で、こういった時代感を一つの評価軸として考えてみるのは非常に有効な視点となるのではないでしょうか。大化け銘柄を発掘するきっかけとなるかもしれません。

コラム執筆:長谷部 翔太郎(証券アナリスト)

日系大手証券を経て、外資系投資銀行に勤務。証券アナリストとして、日経や米Institutional Investors誌などの各種サーベイで1位の評価を長年継続し、トップアナリストとして君臨する。外資系投資銀行で経営幹部に名前を連ねた後、現在は経営コンサルティング会社を経営する。著述業も手がけ、証券業界におけるアナリストのあり方に一石を投じる活動を展開中。著作は共著を中心に多数。

マネックスからのご留意事項

「特集2」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧