マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
先週の本コラムでご報告申し上げました通り、全国統一大学入試(高考)には不正行為がつきものとなっています。
昔は、「替え玉受験」や紙の資料を盗み見るような伝統的な(?)手口が主流でしたが、スマホなど電子機器の普及により、最近では毎年新手の手口が発覚し、監視側との「いたちごっこ」の状況が続いています。
試験での不正はもちろん論外ですが、中国ではさらに上を行く不正行為も行われています。
今年の高考では、中部河南省に住む王さん(女性、34歳)が、大学進学を目指し、2003年以来14年ぶりに受験しました。
彼女は2003年に高考を受験し、地元の大学に合格したのですが、合格通知を盗まれてしまい、これを用いた別の女性が王さんになりすまして入学したのだそうです。
その後、この女性は王さんの名前で大学を卒業し、教職に就いたとのことで、「国民総背番号制」で日常生活にも身分証が必須の中国で、なぜなりすましが発覚しなかったのか不思議に思えてなりません。
王さんは大学進学の機会を逃したまま結婚し、二児の母となったのですが、大学進学をずっと夢見ていました。
合格通知を盗まれたことも知らないままでいたのですが、2015年に銀行のローンの審査が通らなかったことをきっかけに事実を知ることとなり、その後、子育ての合間に受験勉強に励んだ結果、今年、14年ぶりの高考受験に至りました。
王さんの合格通知窃盗事件は、2015年の発覚後広く報道され、警察の捜査も行われた結果、関係者9名が懲戒処分を受けることとなりました。
王さんは、「自分と同じような目に会う人が二度と出ないよう、関係者には細心の注意を払ってもらいたい」と話しています。
王さんが無事大学に入学し、卒業を果たせるよう、願いたいと思います。
中国は五常(仁、義、礼、智、信)を説く「儒教の国」と言われますが、世界第一位の人口を有する多民族国家で、また貧富の差も大きいため、社会規範(道徳)やモラルに対する意識は、国民の間に相当の温度差があるように思います。
反政府、あるいは反共産党を掲げる運動や、テロ行為を企図した動きなどには極めて厳しい捜査、取締りが行われますが、窃盗犯などはよほど多額の事件でない限り野放し状態で、「やり得、逃げ得」になっているのが現状です。
北京の街中には、至る所に監視カメラが設置されているのですが、これもおそらく危険人物の監視が目的なのでしょう。
結果、経済活動でも、偽ブランド品やコピー商品の横行のように、「やった者勝ち、ばれた奴は運が悪い」のような意識がはびこっています。
私は幸いまだ被害に遭ったことがないのですが、世界第二位の経済大国で偽札が普通に流通しているというのも、ちょっと信じがたい話です。
2015年に発生した天津での大爆発事故や、深圳での地すべり事故なども一例ですが、中国におりますと、日本では考えられないような事件、事故が報道されます。
地震など天災は避けられないものですが、人的な要因が被害を拡大している側面も否定できないように思います。
高考を巡り、今年もあっと驚くような話題を目にすることになりました。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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