第265回 ドル/円のボラティリティ低下、2017年後半のリスクイベント【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第265回 ドル/円のボラティリティ低下、2017年後半のリスクイベント【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

今週で2017年前半戦終了です。フランスの大統領選挙、北朝鮮有事リスクを筆頭に、ロシアゲート問題などでトランプ大統領の信認低下による、政策実現性への懐疑的ムードが広がるなどリスクが叫ばれる中、米株は史上最高値圏を維持しています。リスク警戒が米国債市場へと資金流入を促したことで(米国債は流動性が大きく世界一安全な資産と称されています)、米国債利回りは低下傾向、これが株式市場には好感された結果かと思いますが、ドル金利が上昇しないために、米ドルも上昇できずドルインデックスは下落基調。米国は6月FOMCで4回目の利上げを実施、加えてバランスシート縮小についても開始から1年先までのロードマップを示していますが、それでもなおドル金利が上昇することはなく、市場の不安を映しているとの指摘も出てきていますね。ドル/円相場にも円高論者が増えてきているように感じています。

しかし、ドル/円相場は2016年に英国国民投票で、英国がEUからの離脱を決めたときのショック安である、98.90円台からトランプラリーに湧いて上昇した118.60円台の50%押しである、108.90円前後でピタリと下げ止まって111円台まで回復してきています。年前半にあれだけリスクが叫ばれた割には、それほどの円高にはなっていないとみる向きもあれば、50%も上げ幅を削ったことでドル強気相場は終焉したとみる向きも。果たして年後半相場は何がテーマとなっていくでしょうか。

①米国

「ロシアゲート」疑惑でトランプ大統領の政策実現への期待低下。政策課題の実現遅れで、成長率は当初の予想の2.3%を下回り、2年連続での2%割れの可能性も指摘されており、年後半FRBが示した年内後1回の追加利上げや、バランスシート縮小に着手不能となる流れとなれば、ドル金利はさらに低下のリスクにさらされます。
足元の材料としては、米上院共和党指導部が22日公表した、医療保険制度改革法(オバマケア)の代替法案の採決を今週にも目指すとしていますが、早くも5議員が反対を公言するなど党内はまとまっていません。採決が難しいとされる中、形成逆転で採決となればサプライズでドル上昇となるかもしれません。

②欧州

4月フランス大統領選リスクは無難に通過。次は9月24日のドイツ下院選。現在のところメルケル首相の勝利が有力視されており、親EUであるフランスのマクロン大統領と歩調を合わせていけるものとして、大きなリスク要因とは見られていません。しかし、マクロン大統領の新政権で、任命された4人の閣僚が公金をめぐる疑惑で、相次いで辞任する事態に陥っており、政権運営能力に疑問符が付けば、再びポピュリズム台頭の懸念も。金融政策としてはECBのテーパリング時期に注目。米国の利上げは市場の材料としては古く、欧州の引き締めはフレッシュで材料視されやすいものと見ています。

③中国

第二期習政権の人事を決める秋の共産党大会に注目。権力の一極集中が進められる中で、党大会までは経済を安定させる政策を続けるため、中国株や人民元の大きな下落は考えにくいと指摘されていますが、逆に言えば党大会通過後に注意。
足元では「100日計画」の履行期限である7月16日以降の米中関係に注意が必要でしょうか。4月の米中首脳会談で、貿易不均衡の是正に向けた「100日計画」合意が注目されました。現時点で、中国が米国産牛肉の輸入を始めるほか、金融分野でも規制を緩和する10項目が示されていますが、さらなる経済協力に向けた「1年計画」も策定予定とされています。貿易不均衡に向けて中国は動き出しているのですが、同時にこの4月の米中首脳会談では米国が中国に対し「100日猶予」として北朝鮮に対しての具体的な行動を求めています。周知の事実として北朝鮮の挑発は続いており、期限までに中国が北朝鮮の説得に成功できるとは思えず、7月中旬以降は米国の出方に注目となります。

④中東情勢

サウジアラビアのサルマン国王は21日、息子のムハンマド・ビン・サルマン副皇太子を皇太子に昇格させました。イエメンで続く内戦にサウジが介入していることや、湾岸諸国がカタールとの国交断絶を発表した件はこのムハンマド皇太子が主導していたとされています。「ビジョン2030」の中で脱石油を掲げ経済改革を推し進める改革の手腕に期待されていますが、今後は対立するイランに一段と強硬に出る可能性も指摘されており、中東の紛争リスクが高まったとの見方も。

様々なリスクシナリオは年後半にも残されていますが、マーケットの最大のリスクは「上がらぬドル金利」で、債券市場に資金流入が途絶えないのは、いつか来る米株の大調整に備える動きが出ている、という解説が腑に落ちますね。しかし、リスク警戒が強まれば強まるほどヘッジが膨らむため、それほど大きな衝撃にはならないものです。2017年前半も結局はそれほど大きな円高とはなりませんでした。2017年後半もまた、同様にリスクが警戒されるが故に、相場は大きく動きにくく、膠着した相場展開が続くのかもしれません。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

TwitterAccount
@hirokoFR

マネックスからのご留意事項

「特集2」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧