マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
北京では、この一年足らずの間に、レンタサイクル(バイクシェアリング)が急速に普及しています。
数年前から、市政府の主導により、公共レンタサイクル(市内の各所に自転車のスタンド(ラック)を設置し、そちらから自転車を借り受け、目的地近辺のスタンドに戻すもの)が整備されていました。利用料金の支払いは予め利用者登録を行った交通カード(東京のスイカ、パスモに相当)により行われます。
これに対し、最近では民間業者が提供するレンタサイクルが一気に普及し、公共レンタサイクルを駆逐する勢いです。専用のスマホアプリを利用し、利用者登録の上スマホで自転車に搭載された二次元バーコードを読み取ると、ロックが解除され、利用可能になります。料金の支払も、スマホアプリでの決済により行われます。
中国政府の交通運輸部(日本の国土交通省に相当)によると、民間レンタサイクルの利用登録者は1億人を超えているそうです。
民間業者のサービスの強みは、指定場所での借り受け、返却が不要で、路上に置かれている自転車を借り受け、また利用後は任意の場所に放置できることです。
日本のプロ野球チームの応援カラーのように、業者別にシンボルカラーがあり、北京ではオレンジ、黄色、青の三社がしのぎを削っています。最近はそこに水色、黄緑色ほか新参組が加わり、バトルロイヤルの様相を呈しています。
競争激化で、各社は「最初の30分間は無料」あるいは「利用者登録時の保証金が不要」等割安感を打ち出し、利用者の獲得に努めています。
料金は、30分ごとに0.5元(約8円)あるいは1元(約16円)等と格安ですので、人気が高まっており、北京の街中での印象ですと、走行中の自転車の半数程度が、各社のレンタサイクルになっています。
自転車を準備し、また維持管理も行わなければいけませんが、普通の歩道を駐輪場として利用していますので、美味しい商売のようにも思えます。
レンタサイクルには、都市部での交通渋滞と大気汚染の緩和を図りたい政府の後押しがあり、短期間での急速な普及につながっています。
レンタサイクルについては、事故発生時の責任、利用者が納めた保証金の保全、業者が利用者から取得した個人情報の保護等、不透明性が指摘されており、このほど交通運輸部は事業、サービス全体に関する規則案を策定しました。現在、パブリックコメントの手続きに付されています。
規則案には、実名登録の徹底、12歳未満の者の利用の禁止、二人乗りの禁止などが盛り込まれており、また地方政府に対し、自転車専用レーンや駐輪場の整備、さらには駐輪可能エリアと禁止エリアの明確化などを求めています。
また、事業者には、事故対応のための保険への加入も求めています。
事業者にとってはコスト増となる項目が多く、料金の引上げ等につながらないか、心配されるところです。
レンタサイクルは、中国だけでなく、欧米の主要都市でも数多く目にし、世界的に広がっているように思われます。
特に、北京は地形が平坦で、雨も少ないことから、利用には有利な環境が整っています。
東京でも港区などで実証実験が行われているとのことですが、アップダウンの多さに加え、降水量が多く、機材の維持管理が難題になりそうに思えます。地形への対応のため、東京では電動アシスト付の自転車が使われています。道路(特に歩道)が狭く、駐輪場所の確保が難しいことも、普及の妨げになりそうです。
東京あるいは日本の他の都市で、どの程度普及するのか、今後も注目してみたいと思います。
レンタサイクル(バイクシェアリング)を巡る状況からも、日中両国の交通事情等、お国柄の違いが浮かび上がってくるように思います。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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