マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
みなさん、こんにちは。『今どき株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。株式市場は徐々にですが、ようやく日経平均で2万円を固める動きとなってきました。ただし、まだ勢いが出てきたとは言い難く、むしろ消費の弱さや不動産市況への先行き警戒感台頭など、下値リスクもまた同時に燻ってきたように感じます。引き続き、テーマ株などの個別物色相場に加え、市場全体が大きく動くような材料待ちといった状況は変わらないのではないか、と考えています。
さて、今回採り上げるテーマは「宅配」です。昨今、俄かに宅配に関して注目が集まるようになってきました。きっかけはある宅配大手がそれまで手掛けてきた、ネット通販大手の当日配送業務から撤退するという報道でした。その背景にあるのは、人手不足が深刻化する一方、宅配取引量の急増から、従業員への負担が相当なものになっているといった厳しい現実です。特に配達先不在時の再配達は、宅配スタッフに長時間労働を強いているとの指摘もあります。政府が「働き方改革」を掲げる中、宅配大手としては従業員の労働条件改善に(大手顧客の業務から撤退してでも)本気で取り組む必要に迫られていたということでしょう。一方で通販会社としても、消費者へのサービスは極力維持したいところです。これは即ち、宅配スタッフの負担軽減と、消費者サービスの維持という相反する命題をどう解決するか、という難しい問題が提起されたのだ、と云えます。
この命題に対し、考えられる解は幾つかあります。一番シンプルなのは、追加的な配送料金を通販会社あるいは消費者に(一部)負担してもらい、宅配会社の収益改善を促すことでしょう。これらは通販会社や消費者にはコストの上昇に繋がりますが、受益者負担という仕組みは理解もされやすいのではないか、と考えます。二番目の解としては、その厳しい労働条件でも耐えることのできる配送会社を何とか見つけ出すことです。これは簡単ではありませんが、何らかの工夫によって、持続可能なサービスを提供できる宅配業者が輩出されてくる可能性はゼロではありません。そもそも工夫は自由競争社会における武器であり、歴史的には打つ手がないと思われた時こそ発想を大胆に転換したイノベーションが生まれているため、です。第三の解は、宅配スタッフの大きな負担となっている再配達を抑制することです。これは既に宅配ボックスの設置、あるいはコンビニへの留め置きといった解決策が提起されています。プライバシーの問題から、コンビニ利用が適当でない商品もあるでしょうが、それでも宅配スタッフの負担は抑制できるはずです。宅配ボックスなどの設備・施設の活用は今後まだまだ様々なアイデアが出て来ると予想します。この1~3の解に関しては、株式市場でも関連企業、期待される企業などが取り沙汰されていることはご存じの通りでしょう。
これに対し、現時点では話題にも上っていませんが、筆者は第四の解もあるのではないか、とも考えています。筆者の想定するそれはシェアリングエコノミーです。シェアリングエコノミーは、かつてこのコラムでも取り上げたことがありますが、個々人が持つ遊休資産(モノ・場所・技術・時間など)を他者に貸したり、売ったりするシステムです。宅配という分野においても、時間のある個人がモノを運ぶ可能性もあるのでは、と想像するのです。既に、外食に関しては所謂「出前」サービスがシェアリングエコノミーで実施されています。出前は一種の宅配に他なりませんから、それを物品に置き換えることも可能だろうという訳です。当然、配達員の身許は(他のシェアリングと同様に)シェアリングの仕組み会社が確認のうえ、受益者にも公開されることなどで信用を担保するのが前提となります。
もちろん、出前は都度都度のサービスであるからこそシェアリングが成立しやすいという側面は否定できません。したがって、一定の継続的なサービスである宅配のシェアリングは難しいとの指摘もあるでしょう。しかし、最終中継地から個々宅までの所謂「ラスト1マイル」は、やはり都度都度となるはずです。人手不足という構造問題は如何ともしようがない以上、実現への様々なハードルはあるとしてもシェアリングの活用は将来その有効な手立てになると考えます。その場合、必須になってくるのは、物品の破損などへの保険対応でしょう。プロでない方が配達をされる以上、ハンドリングリスクは無視できないため、です。かつて、ゴールドラッシュ時には(金を掘る)スコップが一番儲かったという笑い話がありました。シェアリングエコノミーにおいても、その仕組み会社や保険商品などが、その「スコップ」になるのではないか、と感じています。
コラム執筆:長谷部 翔太郎(証券アナリスト)
日系大手証券を経て、外資系投資銀行に勤務。証券アナリストとして、日経や米Institutional Investors誌などの各種サーベイで1位の評価を長年継続し、トップアナリストとして君臨する。外資系投資銀行で経営幹部に名前を連ねた後、現在は経営コンサルティング会社を経営する。著述業も手がけ、証券業界におけるアナリストのあり方に一石を投じる活動を展開中。著作は共著を中心に多数。
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