第223回 問題ある家政婦のブラックリストを作成 【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第223回 問題ある家政婦のブラックリストを作成 【北京駐在員事務所から】

中国の都市部では、夫婦共稼ぎが一般的で、母親が自宅で子育てという家庭は少数派です。
子供の世話は、一般庶民の場合、父母(子供から見た場合の祖父母)に頼ることが多いのですが、より所得の高い層では、家政婦を雇い自宅で世話をする、あるいは家政婦の送迎で費用の高い幼稚園に通園させることも広く行われています。
家政婦の賃金が比較的低位にあるため、特に大都市で利用が増加中です。
多くの家政婦は勤勉で、家事や子の世話に一生懸命に取り組んでいるのですが、中には問題、あるいは事件を起こす者もいます。
上海の中心部の西に位置し、日本人も多く居住する長寧区で、家政婦の派遣会社400社が加盟する業界団体が、このほど同団体が定める行動規範を逸脱した、あるいは犯罪を犯した家政婦のブラックリストの作成に踏み切りました。
家政婦が、雇用主に対し、偽りの情報を記載した履歴書や健康記録を提出した場合、偽造身分証を用いた場合、派遣先との面接を3回無断でキャンセルした場合、あるいは派遣先の家庭に借金の申込を行った場合などに、対象者の処罰とブラックリストへの記載が行われるとのことです。

業界団体は、上海に隣接する浙江省の省都杭州市で、家政婦が派遣先で窃盗と放火を行い、母親と3人の子供を殺害した事件が発生したことを受け、行動規範を定めました。
杭州市の事件の容疑者の動機は不明ですが、オンラインカジノにのめりこみ、ギャンブル中毒の状態であったそうで、金銭目的での犯行であった可能性が高いとされています。
業界団体では、ブラックリストに登録された家政婦の情報を会員企業に提供するとともに、必要に応じて規制機関等に伝達する一方、一般への開示は行わないとしています。犯罪行為であればともかく、そこまでに至らない当事者間のトラブルに係った者について、一律に個人情報を公表することは問題がありますので、妥当な判断と考えられます。

現在、ブラックリストは長寧区の50社が参加して作成が進められており、8月中には団体加盟の全社が参加するそうです。また、業界団体では、家政婦への応募者全員を対象に、犯罪歴の調査を行うとしており、該当ある者については、例えば道路清掃等、衆人の監視下で従事する仕事を斡旋する予定としています。
上海で外資系企業に勤める女性は、行動規範の制定とブラックリストの導入で、家政婦の質が向上すると期待を示しています。

上海市全体では、2,000を超える家政婦派遣会社があるそうですが、市政府も、サービスの品質向上とトラブル防止のため、派遣会社と家政婦の双方に対する規制を強化しています。特に家政婦への応募者に対しては、誠実に業務に従事することの宣誓と無犯罪証明書の提出、さらに派遣会社の保証を取り付けることを求めるとしており、家政婦自身と派遣会社の双方に高度な規律を要求しています。
これらの施策が成果を挙げ、サービスの質の向上につながることを期待したく思います。

家政婦のサービスを巡る話題から、中国の大都市の人々のライフスタイルの一端が垣間見えるように思いました。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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