第227回 中国人の海外旅行は団体から個人にシフト 【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第227回 中国人の海外旅行は団体から個人にシフト 【北京駐在員事務所から】

中国政府の国家観光局(日本の観光庁に相当)の直属機関で、旅行に関する調査研究を行っている中国旅遊研究院が、このほどオンライン旅行代理店最大手のCtripと共同で、中国人の海外旅行に関する最新動向をまとめたレポートを発表しました。
全体的な傾向として、旅行の質的な向上と多様化が進んでおり、また支出額も増加しているとのことです。
特に、団体旅行から個人旅行への、特に旅行者それぞれが自身の興味、関心に基づき行程や目的地を選ぶ流れが強まっていると指摘しています。

旅遊研究院の幹部は、海外旅行市場の主役である中間所得層で、宿泊、食事、買い物や体験など全ての面において、あわただしく動き回るのではなく、ゆっくり落ち着いて、かつ深い理解を得る旅行をしたいとのニーズが高まっているとし、これが団体旅行から個人旅行へのシフトと、買い物への支出額の割合の減少につながっていると指摘しています。

Ctripによると、今年の上半期の中国人海外旅行客は、42%が団体旅行、58%が個人旅行だったそうです。個人旅行客の割合が年々高まっており、Ctripはその背景として、多くの国が中国人旅行客に対し行っているビザ免除あるいは緩和政策と、SNSや旅行客向けアプリの増加で訪問先に関する情報の入手が容易になったことを挙げています。

旅遊研究院は、中国人海外旅行客について、今後年率5%程度の微増ペースが続くと予想しています。
最も人気の旅行先はタイで、同国政府が中国人旅行客のビザを免除していることが大きく寄与しています。
次いで人気の先は日本、シンガポールとなっている一方、迎撃ミサイルTHAADの配備を巡り、関係が悪化している韓国ヘの旅行客数は激減となっています。
また、欧州への旅行客数が大きく伸びており、今後も続くことが見込まれています。ビザの緩和政策に加え、地方都市からの航空便の新規就航が続いていることが客数増加の背景と見られています。

先日、所用のため一時帰国していたのですが、北京への戻りのフライトでは、ビジネスクラスの座席に幼児を伴った家族連れの姿が目立ち、ちょっと驚きました。
一方、東京の銀座界隈の中国人旅行客の多さは変わらない印象で、団体客の送迎用のバスも頻繁に発着していました。
リピーターが増える一方、所得が増加することで、初めての海外旅行で日本を訪問する人も少なくないのだと思います。
ホテル、飲食店、商店や観光施設などでは、今後も団体客への対応に加え、個人旅行客の満足を得るための対応を進める必要がありそうです。

世界の各地で、中国人旅行客の争奪戦が展開されていると聞きます。
京都などでは、中国人を初めとする外国人旅行客の急増で、国内の観光客の不満が高まっていると言われ、両立の難しさを痛感させられるところですが、関係者の努力と工夫で、問題が解消されることが望まれます。

友人の中にも、中国人訪日観光客向けのビジネスを手掛けている者が数名おり、市場の動向が気になっています。
初めての訪問客とリピーターがともに増え、旅行の満足度の向上と支出額の増加につながることを期待したく思います。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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