マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
マーケット関係者の注目度が高かった8月25日のジャクソンホールシンポジウム。FRBイエレン議長もECBドラギ総裁も今後の金融政策への言及 を避けるものとなり、内容としては市場関係者が期待するようなものではなかったにもかかわらず、マーケットは「ドル安」「ユーロ高」へと大きく動いています。
何故、ジャクソンホールシンポジウムでイエレン、ドラギ両氏から今後の金融政策への言及がなかったにもかかわらず、ユーロが上昇し、ドルが下落する値動きが大きくなったのでしょうか。
今回のジャクソンホールシンポジウムでは、ドラギ総裁が3年ぶりの参加表明となったため、ECBの緩和縮小が示唆されるのでは、との期待が先行しユーロが大きく上昇してしまっていたことから、事前に関係者から金融政策に関する内容にはならないと釘を刺されたことで、シンポジウム講演前にはユーロ上昇の勢いが鈍っていました。
振り返ってみるとユーロ/ドルは今年年初の取引で付けた1.0342ドルが最安値で、ひたすら8ヶ月近く上昇を続けているのですが、春のフランス大統領選挙で極右のルペン氏が敗退したことで、フレグジット(フランスのEU離脱)への懸念が消えた瞬間から、ユーロの上昇は加速。さらに6月27日のECBフォーラムでドラギ総裁が「経済が改善するにつれ、金融緩和の調節が必要だ」「デフレ圧力はリフレに変わった」と述べたことで、9月ECB理事会での緩和縮小の思惑が急浮上、ユーロ上昇を加速させていました。市場では8ヶ月も続いたユーロ上昇を警戒する声も出てきており、ジャクソンホールシンポジウムではドラギ総裁からユーロ高へのけん制発言が飛び出すのでは、との憶測も出ていたことから、講演前にユーロを手仕舞ってポジションを軽くした向きや、売りに回った向きもあったものと思われます。しかしながら今回、ドラギ総裁はユーロ高をけん制することもありませんでした。これを機にユーロ買いが再開、売り方は踏み上げられる展開となったのです。
一方で、イエレンFRB議長の講演でも、事前予想通り今後の金融政策への言及がなかっただけでなく、金融規制の見直しは「緩やかであるべきだ」と、トランプ政権が掲げる大幅な規制緩和をけん制したことで、ドル売りを強める結果に。また、足元で年内の追加利上げの織り込みが大きく後退しており、日米金利差拡大を材料にドル/円相場が上昇するというシナリオが描きにくい環境となってきています。こうした背景からファンド筋は、2017年後半戦は「ユーロ買い」をテーマにしてトレンドを作り収益を狙っているようなムードです。
しかしながら、9月は金融、政治イベントが盛り沢山。1月から上昇を続けているユーロがこのまま年末まで上昇できるためには、様々な関門突破が必要となってきます。
まずは9月7日のECB理事会。本当に年内にECBの緩和縮小がスタートとなるのであれば、9月の理事会で示唆されるとの期待が足元のユーロ高の背景。しかし、これが肩透かしに終わればユーロは利食いの嵐にさらされ、相応の調整を強いられることとなる可能性も。9月がダメでも10月、12月と年内はあと3回のECB理事会があるため、期待はその先へと紡がれるとは思いますが、、、。
そして9月20日のFOMCです。ユーロが主役ではありませんが、バランスシート縮小の開始時期が明確となる、年内の追加利上げの可能性が示唆されるなどタカ派的内容となれば、1月から8ヶ月続いているドル安の修正が起きる可能性も否めません。
その他、9月24日のフランス上院議会選挙とドイツ連邦議会選挙、そして秋口には中国共産党大会と政治イベントも多い他、米国には債務上限問題も重くのしかかっています。足元では、ユーロ上昇再開のムードですが、テクニカル面からユーロ/ドルの1.200ドルの節目は意識されやすく、ここを突破できるか否かが重要。緩和縮小へと向かうことが予想される欧州。中長期的にはいずれこの節目を突破してユーロがさらに上昇する可能性は大きいと思われますが、9月、様々なイベントを通過する過程では1.200ドル節目突破にはかなりの抵抗が予想されます。ユーロを取引する場合は、様々な金融・政治イベントに留意することと、チャートの節目1.200ドル近辺の攻防に注意を払うことが肝要な局面です。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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