マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
9月8日、豪ドル/ドルが7月の高値を超えて、年初来の高値を更新しました。(豪ドル/円はドル/円相場での円高に連れて下落圧力が強く膠着の様相)2017年に入ってから米ドルが下落トレンドを形成しているため、対ドルでの豪ドル高が進行しているという側面もありますが、鉄鉱石や銅価格などが上昇基調を強めていたことも、豪ドル上昇の背景。これまで上昇を続けてきた銅市場が先週末9月8日に天井圏で大きな陰線を付けたことが気がかりです。
9月5日、RBA(豪州準備銀行)は予想通り政策金利を1.50%に据え置くことを発表しました。据え置きは2016年8月の利下げ実施後12会合連続です。理事会声明では中立的な金融政策スタンスが維持されていますが、金利先物市場では今年6月中旬以降、来年5月会合時点の利上げ確率が6割強まで上昇、これが8月時点には9割近くまで上昇したことから、豪ドルが5月以降、上昇トレンドを描く原動力となりました。ただ、RBA当局者が豪ドル高に対する牽制の発言を繰り返したことで、足元の利上げ織り込みは「来年8月会合時点で5割程度」にまで落ち着いています。ただし、最後の金利変更は「利下げ」であったことを考えると、次なる金利変更が「利上げ」になるとしたマーケットのセンチメントの変化が豪ドル高を演出していることには違いがなく、これまで豪ドルは、次なる一手が利上げとなることを材料に上昇してきた、とも言えます。
しかしながらこの見方は今後も続くのかどうか、、、。次なる一手が利上げになるかどうか、そしてその時期がいつになるかは、オーストラリアの景気動向次第です。
オーストラリアの最大の輸出先は中国です。中国の景気が悪化すれば輸出が減少してしまうため、豪ドルは中国の動向に敏感に反応することから「疑似人民元」としての側面もあるとされています。オーストラリアの貿易総額6,693億豪ドルのうち、中国との貿易が23.2%でトップ。特に輸出相手国として中国は28.8%ものシェアを占めていますので、中国の景気動向は豪ドルの先行きにも大きく影響します。
その中国ですが7月の鉱工業生産、固定資産投資、小売売上高など主要指標の全てが予想を下回っています。中国経済は共産党の景気刺激策に支えられて拡大しているとされてきましたが、特に今年は共産党の人事を決める5年に1度の共産党大会の開催が、10月18日に予定されていることから、政治の安定を図るために景気を刺激しているとみられてきました。この共産党大会まであと1ヶ月余りとなりましたが、足元では人民元が大きく上昇してきています。先週、人民元は対ドルで16ヶ月ぶりの高値に上昇しました。2017年年初来の上昇率は7%に達しています。そもそも米ドル安も一因ですが、それだけではなく、中国当局が元相場の管理を強めていることから人民元の先安感が後退したことによるものという指摘があります。中国当局の突然の人民元切り下げで引き起こされた、人民元の暴落(チャイナショック)以降、中国からの資金流出が止まらず、中国は規制を強めてきました。この効果によるもの、というわけです。
しかしながら中国景気を支えるのは輸出であり、2016年の中国当局による人民元の切り下げも輸出拡大をもくろんだものでした。人民元が上昇すれば景気への影響が懸念されます。
その意味で、今週14日に発表される中国の8月の鉱工業生産、固定資産投資、小売売上高など主要指標発表には注意が必要です。中国景気の悪化が鮮明となれば、豪ドルにも影響が及ぶかもしれません。
オーストラリアの輸出品目のトップの鉄鉱石(シェア15.5%)次いで石炭(11.7%)(※2015年)などの価格が中国需要に湧いて上昇してきました。また金生産は中国に次いで世界第2位。金価格もドル安と有事への警戒などから上昇基調が続いています。このため豪ドルも上昇してきたとも言えますが、先週末には銅価格が天井圏で大きな陰線を示現。この先行きに注視していきたいところです。銅生産量、オーストラリアは世界第6位ですが(1位はチリ)埋蔵量ではオーストラリアはチリに次いで世界第2位であり、銅価格上昇は豪ドル上昇の思惑にもつながってきた側面もあるのです。銅は送電線から自動車まで幅広く使われるため、銅の価格は景気に先行して動くとされています。「ドクターコッパー」と呼ばれ銅価格の変調が炭鉱のカナリアとなる、という見方もありますので、今週以降の銅価格の推移には注目です。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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