マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
北京の大気汚染は、数年前に比べるとかなり緩和されたように思います。特に、日本で頻繁に報じられたような「一寸先も見えない」という酷い汚染はほとんどなくなりました。
ただ、中部から南部へと汚染が広がっているそうで、中国全体としては決して安心はできません。
北部では、冬場に暖房用の石炭燃焼が汚染源として加わるため、一年で最も酷い汚染が発生します。寒さとのダブルパンチで憂鬱になってしまいます。
大気汚染は特に子供や高齢者の健康に重大な悪影響を生じており、市民の関心も年々高まっています。北京市を初め各地方政府は市民の不満を解消したいとして様々な対策を講じていますが、大気汚染には様々な要因、複雑な事情が絡んでおり、劇的な改善には至っていません。
このほど、政府の環境保護部(日本の環境省に相当)は、冬場に向けての新たな大気汚染対策を打ち出し、特に深刻な汚染が発生する北京市及び周辺の地方政府の体制を強化し、一貫した取組を行う方針を発表しました。
新たな目標として、10月から来年3月の6ヶ月間を対象に、北京市及び隣接する天津市、河北省、さらにその周辺の山東省、山西省、河南省にまたがる地域の主要28都市における大気汚染物質PM2.5の濃度を、前年同期比15%以上引き下げるとしています。
また、北京市、天津市及び河北省では、3地方政府が共同で新組織「環境保護局」を設立し、広域での一貫性ある取組を行う予定です。
北京市、天津市と石家庄市(河北省の省都)の三市にはさらに厳しい目標が設定され、PM2.5の濃度につき、前年同期比25%以上の引下げが、また重度の汚染が発生した日数につき、同20%の引下げがそれぞれ求められます。
環境保護部の幹部は、北京市、天津市及び河北省の各政府が、2013年以降大気汚染対策に積極的に取り組み、成果を挙げていたものの、今年の1月から2月の汚染状況は4年ぶりに前年比悪化となり、このままでは年間目標の達成が困難と指摘しています。
このため、新たな目標設定と体制強化が打ち出されました。
具体的な施策については、汚染状況のモニタリングと情報開示を強化し、工場等で基準を超える汚染物質を排出した事業者や、職務怠慢のあった公務員に対する罰則を厳格化するとしています。
また、煉瓦、セメント等の建材の製造業者を対象に、11月半ばから冬場の操業を禁止するという厳しい措置も取られます。鉄鋼の生産半減や、暖房用の石炭の使用削減も求められるとのことで、全体的にこれまでにない厳しい内容となっています。
これまで、大気汚染対策の目標は、「10年後に~」あるいは「2030年に~」等、政策立案者あるいは決定者が責任を負うとは思えない内容のものだったのですが、今回は目先に迫った冬場の、かつ前年同期比の目標ということで、達成度の評価が容易なものになっています。
政府にもプレッシャーがかかる内容で、これまで以上に真剣に取り組むことが期待されます。
大気汚染さえなければ、北京の厳しい冬もそれなりに快適に過ごせます。政府の施策が功を奏し、汚染が軽減されることを願うのみです。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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