マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
北京で市民が毎日の通勤に使う交通手段は、自家用車のほか、地下鉄、路線バスあるいはタクシーになります。
タクシーの運賃が安いので、日本人の駐在員には「毎日タクシー通勤」という人も少なくありません。
道路は朝晩を中心に渋滞が酷く、地下鉄が唯一、所要時間のめどがつく交通手段になります。私も朝の出勤時には地下鉄を利用しています。
北京の地下鉄は、東京のJR、私鉄、地下鉄を包含する形で、郊外からの路線と、市中心部を回る環状線から成っています。
毎年新線が開通し、少しずつ路線網が充実しているものの、東京の鉄道に比べると遥かに貧弱で、自宅や職場が駅から離れている人は、バスなどに頼らざるを得ません。実際、市中心部でも、また郊外でも、東京よりはるかに多くのバスが走っているのを目にします。
渋滞とは無縁の地下鉄ですが、朝夕のラッシュアワーには乗客が殺到し、東京の地下鉄を遥かに上回る大混雑になります。運行間隔は2~3分と東京と大差ないのですが、ほとんどの車両が6両編成で定員が少ないことが響いています。
加えて、乗車時には空港でのセキュリティチェックのような手荷物検査があり、これがネックとなってX線検査機の前に乗客の長蛇の列ができます。
荷物検査を抜けても、駅や時間帯によっては改札での入場制限があり、さらにホームまで降りると、乗客があふれて乗車できず、列車を何本も見送ることがしばしばです。
「渋滞と無縁で時間が読める」と申し上げましたが、実際の利用には入場制限等による時間のロスを見込まねばなりません。
地下鉄の混雑に対する乗客の不満は強く、運行する北京市地鉄運営有限公司は、様々な対策により不満の軽減を図っています。
本年1月より、改札での入場制限が常態化している76駅について、ウェブサイト上に制限が行われる時間帯を掲載し、注意喚起に努めています。
また、車両故障等による運休や遅延に関する情報も、ウェブ上に掲載されるようになりました。
さらに、スマホアプリの開発も進めており、近い将来、路線ごとの混雑状況や各駅の改札制限等について、アプリでリアルタイムに近い形で情報が配信される予定です。
もっとも、利用者はこれらのサービス強化の効果について懐疑的で、「駅や路線の混雑状況は既に熟知している」、「旅行者には有用かもしれないが、通勤客には今更の感がある」、さらには「道路の渋滞であれば迂回等で対応できるが、地下鉄ではどんなに混んでいても代替手段が無い」等もっともな意見が聞かれています。
根本的な解決には、路線網の更なる充実、道路の渋滞緩和による利用客の分散、さらには都市機能の郊外への移転あるいは分散化が必要と思われ、道のりは長そうです。
北京の公共交通を見ると、東京の効率性の高さに感心させられるとともに、大気汚染等の問題とあわせ、現在の人口や経済活動が都市としての容量を超えているのではないかと危惧してしまいます。
市政府は、既に新たな戸籍の付与を制限する等により、人口流入の抑制に努めていますが、将来、特に水不足が深刻化することで、市の機能が維持できなくなることが懸念されています。
中国の長い歴史の中では、遷都が何度も行われていますが、いずれ北京が首都でなくなる日が来るのかもしれません。
地下鉄あるいは公共交通機関の現状から、北京が抱える様々な問題が見えるように思います。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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