第232回 南極への観光客向けのガイドラインを作成 【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第232回 南極への観光客向けのガイドラインを作成 【北京駐在員事務所から】

中国では、日本の高度成長期からバブル期を思わせるような海外旅行ブームが続いています。

日本、韓国、タイなどを訪れる初心者向けの団体ツアーも盛況で、北京空港の出発ロビーには、40名から50名はいるであろう団体客の姿が見られます。

一方、経験を重ねたリピーターは、団体旅行から個人旅行に移行し、訪問先も欧米や世界各地のリゾート、さらにはアフリカなどへ広がっています。

バブル経済の頃には、「世界のどこにも日本人観光客がいる」などと言われていましたが、今やその地位は完全に中国人に取って代わられてしまいました。

中国人の海外旅行熱はとどまるところを知らず、今急成長中の訪問先の一つが南極です。
南極への観光ツアーを企画、運営する企業が加入する国際団体の集計によると、昨年2016年に南極を訪れた中国人観光客は5,286名で、観光客全体の12%を占めました。国別では米国の14,566名に次ぐ第二位でした。

2010年の観光客数は800名に満たず、米国のほか、オーストラリア、カナダやドイツなどよりも少なかったそうで、急成長ぶりが理解できます。

観光客の増加に伴い、環境保護と、訪問者の満足をどのように両立させるかが大きな課題となっています。

南極地域の平和的利用について定めた国際条約「南極条約」の協議国(全29ヶ国)中、中国、インド、ポーランドとエクアドルの4ヶ国のみが、南極を訪れる自国民についての行動と安全に関する法規制を定めていないとのことで、中国で南極ツアーを催行する旅行代理店の業界団体は、政府に対応を求めています。

南極に関する調査を行っている研究機関の幹部も、習近平主席が提唱する「大国としての中国」を具現化するためにも、南極観光に関する法整備は望ましいと述べています。

このような動きを受け、政府は4月に、国家海洋局を中心として法整備に関する検討を開始しました。

南極を訪問する観光客に、適切な保険への加入を義務付けるとともに、希少動物の保護のため、旅行中にすべきこと、しても良いこと、してはいけないことを明記する内容とする予定です。罰則規定も含まれます。

南極への旅行客のうち、8人に1人が中国人ですので、現地で適切な行動が取れない場合、環境への重大な影響が生じることが懸念されます。実効性のある内容で法令やガイドラインが整備され、訪問客の満足と環境保護の両立が図られるよう、望みたいと思います。

数年前、テレビ番組で、「南極を訪れる日本人は年間600名」と紹介されているのを見ました。

ツアーの料金の高さももちろんですが、日本からですと往復の移動の時間が長くなり、2週間程度の日程が必要となるため、自ずと敷居が高くなってしまいます。

移動に時間を要することは中国人にとっても同条件ですが、中国の場合、若手の企業経営者などで、「時間もお金も自由になる」という人が数多く存在し、彼らが南極を含め、世界の至る所に繰り出しています。

遠からず、世界の高級リゾートやクルーズ船ツアーなども、中国人の旅行客に席巻されてしまうのかもしれません。

ここにも国の力、勢いが見て取れるように思います。

南極観光を巡る話題に、海外旅行市場での日中の主役交代を見せつけられることとなりました。

=====================================

コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

マネックスからのご留意事項

「特集2」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧