マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
明日18日から中国で5年に1度開催される最重要会議「中国共産党大会」が始まります。中国では中国共産党が1党支配を確立しており、この党大会が国の方向性を決める最高意思決定機関。この党大会で次の5年の重要人事が決定されるため、人事に大きな波乱がないように、習近平政権によってインフラ投資などの景気刺激策が取られ、2017年の中国市場が安定していたとの指摘があります。逆に党大会が無事通過すれば、市場安定化策が打ち切られる可能性もある、ということで党大会閉幕後の景気の失速が警戒されています。
足元の経済指標も冴えません。中国の8月分の経済指標は軒並み低調でした。鉱工業生産や小売売上高が市場予想を下回ったほか、固定資産投資はインフラ投資の伸び鈍化を受けて大きく減速、1999年以来の低水準となっています。中国国家統計局が発表した9月製造業PMIは前月比0.7ポイント上昇の52.4で、5年ぶりの高水準となり驚かされましたが、イギリスの調査会社であるIHSマークイットが発表した9月のPMIは前月比2.1ポイント下落の50.6。21カ月ぶりの低水準となっています。政府発表の数字と民間発表の数字の乖離もまた、党大会前には悪い数字を発表したくなかったという中国当局の思惑が見え隠れしているとの指摘も。
中国経済はピークアウトしたのか?!という懸念が広がるなか、9月21日、米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ社(S&P社)は、中国の長期国債格付けを「ダブルAマイナス」から「シングルAプラス」に1段階引き下げました。S&P社は中国の長期にわたる債務増加が金融リスクを高めるとしています。
こうした中、ドル/人民元相場では年初来続いた人民元高トレンドが9月8日を境に、足元では人民元安ドル高の流れへと転換しています。9月8日、中国人民銀行は2015年9月から続けてきた「為替先物規制」の見直しを発表しました。これは2015年のチャイナショックをきっかけに人民元安抑制のために導入された規制。この規制の緩和が、中国が人民元安を容認する方向へシフトしたとマーケットは受け止めたようです。景気減速が見込まれる中での「為替先物規制」の緩和は、今後人民元安を容認することで、輸出競争力を高める目的があるとみられます。(ただし10月2日に人民元安ドル高は一服しており、これが本格的な転換であったかどうかは党大会後の値動きに注目。)
ここで気になるのが豪ドルです。オーストラリアの最大の輸出先は中国。中国の景気が悪化すれば輸出が減少してしまうため、豪ドルは中国の動向に敏感に反応することから「疑似人民元」としての側面もあるとされています。オーストラリアの貿易総額6,693億豪ドルのうち、中国との貿易が23.2%でトップ。特に輸出相手国として中国は28.8%ものシェアを占めていますので、中国の景気動向は豪ドルの先行きにも大きく影響するのです。豪ドル/ドルの相場もまた9月8日が天井となり下落へとシフトしています。
RBA(豪中銀)は10月3日、政策金利を過去最低の1.50%に据え置くことを発表しました。据え置きは12回連続。声明は前回9月5日から大きな変化がなかったのですが、これはRBAが政策金利を当面の間、過去最低の1.5%に据え置く可能性が高いことを改めて確認したということでもあります。金融政策面から豪ドルを買う理由はありません。
また、IMM通貨先物ポジションでヘッジファンド勢らのポジションを確認すると9月26日時点で77,194枚まで豪ドルの買い越しポジションが積みあがりましたが、豪ドルは9月8日にはトップアウト。豪ドルを買っている投資家が多いのに、豪ドルが上がらない(むしろ下がっている)ということは、損失を抱えたままの投資家らが多いということ。豪ドル下落に耐えられなくなった投資家らが買いポジションを投げることがあれば、ここから豪ドル下落に拍車がかかる可能性もあるように思います。その後10月3日と10月10日分のデータが発表されていますが、少しづつファンド勢の豪ドルの買いポジションは整理されつつあり、これが加速すれば、大きな豪ドル下落を招く可能性もあるように見えます。
今週の中国共産党大会後は豪ドルの値動きに注目ですね。
(※ただし、為替市場において先物市場の取引はそれほど大きいものではありません。貿易決済は現物での取引など膨大な取引の中の一部に過ぎず、必ずしもマーケットを大きく動かす材料というわけではありません)
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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