第235回 国際金融都市ランキングで上海が躍進 【北京駐在員事務所から】

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第235回 国際金融都市ランキングで上海が躍進 【北京駐在員事務所から】

「国際金融都市」と言えば、ロンドンとニューヨークが代表格でしょうか。
ロンドンは長い歴史に加え、特に保険業が発達していることが特徴的です。
また、ニューヨークは基軸通貨としての米ドルと多くの大企業の集積が、金融取引を誘引しています。

ロンドンはBrexitが、またニューヨークはトランプ政権下での社会の不安定化とテロへの懸念が、国際金融都市としての地位に影を落としていますが、若干の変動はあっても、今後も衰退してゆくことは無いのでしょう。

もう30年近く前、バブル経済の頃には、「ロンドン、ニューヨーク、東京」と言われたものですが、「失われた20年」と言われる日本経済の低迷に加え、様々な規制や法人税率の高さ、金融やITの専門人材の不足、生活費の高さや地震、台風等の災害リスクといった様々な要因から、東京の地位は徐々に低下しています。

今や、アジアの金融都市と言えば、東京、香港、シンガポールが拮抗する状況となっています。

ここ数年、これらの都市に迫る形で、上海が存在感を高めています。
英国と中国のシンクタンクが共同で2007年より年2回行っている「国際金融都市ランキング」調査の最新版(2017年9月)で、上海が第6位と初めてトップ10入りを果たしたそうです。前回3月の調査では13位でした。

上位は順にロンドン、ニューヨーク、香港、シンガポール、東京となっており、ここでも東京の退潮ぶりが確認された形です。

中国の他の都市では、北京が10位、深圳が20位、広州が32位にランクされています。

上海は、特に保険会社から高い評価を得ており、世界の最重要市場の一つと見なされています。
保険業は、人口集積、自動車の普及、物価や不動産価格の上昇に加え、製造業の集積があることが重要ですので、中国が有望市場であることは疑いのないところです。
調査を行った英シンクタンクの幹部は、上海の台頭の要因として、インフラの整備と規制緩和の進展を挙げています。加えて、以前は香港、シンガポールと上海の間には大きな差があったものの、上海の改革のスピードは速く、急速に差を縮めていると指摘し、今後起業支援、政策の整合性及び一貫性の確保と行政の透明性向上により、ビジネス環境の更なる改善が期待できると述べています。

また、中国の研究機関の研究者は、今後人民元の国際化と、習近平主席が推進する「一帯一路構想」の具体化が進めば、上海の地位が更に高まると期待を示し、そのための要件として、更なる市場開放と他の国際金融都市との協調を挙げています。

証券業の立場で見ますと、A株(国内株)市場の海外投資家への開放が極めて限定的で、外国証券会社の参入の条件も厳しく、国際金融都市と呼ぶことに疑問も感じられるところですが、資金取引や保険の分野では、世界第二位の経済大国における金融センターとして、魅力は大きいのでしょう。

東京も、規制緩和、人材育成やインフラの整備で魅力を高めようと努力していますが、やはりベースは国の経済力です。残念ながら将来は明るいとは言えないように思います。

国際金融都市ランキングから、またも中国の勢いを感じさせられることとなりました。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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