第247回 火災防止のため建物に関する規制を強化 【北京駐在員事務所から】

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第247回 火災防止のため建物に関する規制を強化 【北京駐在員事務所から】

昨年末に、韓国やフィリピンで相次ぎ大きな火災が発生し、多数の犠牲者が出る事態となりましたが、中国でも住宅や商業施設などでの火災は頻繁に発生しています。
発展途上国にありがちなことですが、建物の消火設備、避難設備が十分でない、あるいは破損しており使えないといった事例、さらには通路、避難路に物が置かれており避難の妨げになった事例など、管理上の問題も数多く認められています。
もっとも、日本でも雑居ビルの階段や通路に物が置かれ、火災発生時に逃げ遅れた人が犠牲となるケースも生じており、他人事ではありません。

昨年12月の初めには、北京に隣接する天津市の高層ビルで火災が発生し、10人が死亡、16人が負傷しました。最上部の38階に放置された建築資材などが火元と見られており、関係者11名が拘束されたそうです。
政府の公安部(日本の警察組織に相当します)は、特に子供を含め多くの人が利用する商業施設、娯楽施設や高層ビルでの火災防止策の強化が急務であるとして、12月中旬に新たな規制案を公表し、今月20日までの間、パブリックコメントの手続に付しています。
規制の内容は多岐に渡っており、例えば商業施設については、地下3階以下、ならびにマンションの高さ24m、オフィスビルの高さ27m以上のフロアに設けることが禁止されます。
カラオケ店などの娯楽施設は地下1階以上に、また子供向けの施設は1階から3階までに限り、それぞれ設置が認められます。あわせて、子供向けの施設では独立した非常口と避難階段の設置が義務付けられます。

公安部は、この規制案により、高層ビルでの火災発生防止を図るための法的根拠が明確となり、重大事故の減少が期待されると述べています。

規制案では、管理の強化も求めており、高層ビルの所有者及び使用者が部分的な改装等を行う場合に、消防当局の承認を得ることを必須としています。
当然ながら、改装等の際には、防火壁や火災報知器、煙感知器等の機能に悪影響が生じないことが求められます。
さらに、建物の所有者、使用者が複数名存在する場合には、管理会社あるいは火災予防サービス会社を選任し、常時2名以上の態勢で火災発生の防止に努めなければならないとしています。
商業施設や娯楽施設では、通路に可燃物を置かないこと、看板や屋外装飾に可燃物を使わないこと、またそれらの設備が避難、排煙や消火活動の妨げとならないことも求められます。

罰則規定については、建物の所有者、使用者及び管理会社が規制に違反した場合、一定期限内の治癒が求められ、達成できない場合には警告あるいは行政罰を受けるとされています。
中国では総じて罰則が軽微で抑止力になっていないため、今回の規制強化がどの程度実効性を持つものとなるか、注目されるところです。

工場や鉱山などでの労災事故も同様ですが、大規模火災も経済成長が続く国の負の一面に見えます。金儲け優先で安全がないがしろにされるのは世の常とは言え、犠牲者やその家族にとってはたまったものではありません。中国社会が安全重視の方向に向かうことを願いたく思います。

消防に関する規制強化の動きに、中国社会の現状が映し出されて見える話題でした。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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