マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
日本人が中国に入国する場合、チベットなど一部地域を除いて、観光や商用等を目的とする短期(15日間以内)の滞在であれば入国ビザは不要です。
このような取扱は、日本、シンガポール、ブルネイの3ヶ国の国民だけが対象で、また別にいくつかの国とはビザの相互免除を行っているのですが、中国系の住民が多いマレーシアなどを含め、世界のほとんどの国の人々は、中国入国にあたり原則的にビザが必要となっています。
昨年末に、米国、オーストラリア、韓国など53ヶ国の国民を対象に、北京首都空港など所定の空港あるいは港に到着し、出国のための航空券などを有している場合に、144時間(6日間)以内のビザ無しでの滞在が認められることになりました。北京市及び隣接する天津市と河北省への訪問、滞在ができますので、万里の長城の観光や、2022年に開催されるオリンピック、パラリンピック冬季大会の観戦などを楽しむことができます。
北京市と天津市は、2013年に72時間(3日間)以内のビザ無し滞在の制度を設けていたのですが、今回対象地域を河北省にまで広げ、期間も6日間に延長しました。さらに、出入国の場所についても、従前は北京及び天津の空港に限定されていましたが、国際列車が発着する鉄道駅や、客船が就航する港でも入国申請を受け付けることに改めました。
これまでに同制度を利用した外国人旅行客からは、「72時間では短い」との声が多く上がっていたそうで、144時間に延長されることにより、利便性が高まることが期待されます。
また、北京首都空港では、この制度を利用してビザ無し滞在をする外国人旅行客に、無料での荷物の預りサービスを行うとのことで、今回の制度変更の「本気度」がうかがえます。
上海市と、隣接する江蘇省及び浙江省では、2016年より同様の144時間以内ビザ無し滞在が認められており、上海ディズニーランドや「東洋のベニス」と称される水の都・蘇州の観光などを楽しむことができます。
今後、中国国内の様々な観光名所で、外国人旅行客の獲得合戦が展開されるのかもしれません。
北京では、首都空港の発着枠が上限に達しており、また以前より商用等で多くの外国人が訪れていたため、外国人観光客の誘致にはあまり積極的でなかった印象があります。
万里の長城など「キラーコンテンツ」の存在も大きなものがあります。
しかし、来年に予定されている新空港の開業後は、欧米等への長距離便が大幅に増えるものと見られ、北京で乗り継いで第三国間を移動する外国人旅行客も増えることが予想されます。
乗継である程度の時間が取れれば、観光や食事等を楽しむことができ、将来、観光目的での訪問につながることも期待されます。
今回の制度変更は、日本人には特段恩恵が無いものですが、現在欧州やアフリカ、南米などへの渡航に多く利用されているソウルや中東各地を経由しての旅行が、「北京経由」にシフトする可能性も十分にあるように思います。
日本でも、中国人旅行客獲得のため、ビザについて段階的な緩和が図られていますが、厳格な出入国管理の維持と往来の活発化は両立が難しいものです。中国ほか諸外国との外国人観光客の獲得競争がますます激化することが予想される中、関係各機関が連携し、適切な水準での運用が図られることを期待したく思います。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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