良質な種(投資のための基礎的な知識や知恵)をたくさん手に入れて、一緒に育てていきませんか?投資初級者の方の背中を押すお話をしてまいります。(現在は更新しておりません)
某総合証券に勤めていたころ、資産運用のお話をするにあたっては家族構成をはじめ、非常に個人的な事情を伺うことが多くありました。身内には相談ができない、赤の他人にだからこそ話せる、そんな大人の事情がこの世にたくさんあることを、この頃お客様から教えていただきました。今回はそんなエピソードのひとつです。
出家して神様に仕えているという、独り身の70代の女性のお客様はいつも穏やかで、来店の際はにこやかにおしゃべりをしてお帰りになる方でした。仕事の手伝いをしてくださっている歳の離れた妹さんと仲がよく、時々妹さんを伴ってお見えになることもありました。
「神様が守ってくれているので、余計なものは必要がないのよ」とおっしゃるその方の資産は数億円。しかしその身なりに華美なところはなく、いつでもそのシンプルな生活ぶりが感じられる、素敵な装いです。(決して黒装束のようであったり、身なりにかまわない感じではありません。)
ある日、手続きを終えた後、そのお客様と談笑しているときのことです。先々の話が話題になりました。自分がこの世を去ったあと、遺産をどうしたいか、というお話です。
お客様
「私のお金は全部○○ちゃん(←妹さんの名前)に残したいの。そもそも私が手伝ってほしいとあの子を呼び寄せたのよ。」
筆者
「そうでしたか。相続のことを今から考えておくのは大切ですから、○○さん(←妹さんの名前)とも、少し話しておくのはよいかもしれませんね。そのとき一番悲しい思いをして戸惑うのは妹さんでしょうから」
お客様
「えぇ、全部あの子に渡してやらないと。一緒に住んでいるわけだし、でも私には神様に仕える前に子供がいたのよ。その後一度も会ってはいないのだけどね。」
筆者
「(筆者硬直。。)」
そう、独り身と思っていた方には、相続において法的に妹さんよりも優先される実子がいたのでした。「とうの昔に縁は切れていて、一緒にも住んでいないのだから妹さんに全部渡せるはず。」と、いうのがお客様の主張ですが、法律ではそうはいきません。実子の相続権には遺留分(法定相続人が遺言による相続で著しい不利益を被ることがないよう相続人に遺産の一定割合の取得を保証するもの)が認められています。
そもそも、この法定相続人以外の相続人に相続をする場合、遺言書が必要ですし、何もなければ一緒に住んでいようとも法定相続人以外の人に遺産が相続されることはないはずです。
筆者は、必死に相続について説明をはじめ、「○○さん!遺言書作ってください。遺言書!必要ですから!」と今現在、非常に元気なお客様に向かって、なんとも不吉な説得を試みたのでした。。
このエピソードは極端な例であったかもしれませんが、自分の一番大事な人がこの先困らないように資産を残してあげたいと思った時、それを可能にする手はずは自分が生きているうちにとっておかねばなりません。若く、生命力にあふれる毎日を送り、資産を作っている最中の人でも、自分以外の誰かがこのお金を使うことがあるかもしれないことは、頭の隅に覚えておいていただきたいのです。何も知らない家族が残された資金を、「受け取れない」ことも考えられます。
自分が幸せになるために頑張って作った資産を、自分に何かがあったときもしっかり守れるようにしましょう。遺言をつくるまでにいたらなくても、どの金融機関に資産があるかが家族にわかるように整理しておくことは大切です。資産作りはそもそも家族と相談しながら、誰にとってもわかりやすく管理するのがおすすめです。「そのとき」は老若男女関係なく、ある日突然やってくるかもしれないのです。
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