単純平均の誤解

世界最大級の運用資産規模を誇る投資信託会社、バンガードがお届けする運用コラム。世界経済を大局的にとらえ、正しい運用のあり方を示唆します。(現在は更新しておりません)

単純平均の誤解

 しばしば言われることのようですが、歴史的にみた米国株式の年あたりの平均リターン(ドルベース)は約10%だそうです。ただし、だからといって、ある1年間だけ取ってみて、米国株式投資の年次リターンがおよそ10%であるというわけではありません。

 この年あたり10%という数字は1926年から2003年までの78年間という、非常に長い期間をもとに計算された平均値です*。長期のリターン平均値を知ることは、投資判断のひとつの材料にはなりますが、その限界についても同時に知っておく必要があります。例えば、砂漠で燃えるような暑い日が、夜になると一転、凍りつくような寒さになるときがありますが、これも単純に1日の平均気温として見てしまうと、非常に快適であるかのような数字になってしまいます。

 実は1926年から2003年の78年間で、実際にリターンが上述のように10%近辺(8%から12%)になった年はたった6回(年)しかありませんでした。ちなみに、78回(年)のうち、12%超のリターンを記録したのは41回、0%から8%の年は7回でした。そしてなにより、マイナス・リターンの年は全体の約3割、24回もあったのです。(ちょっと想像よりも多いと思いませんか?) 株式のリターンも、先の砂漠の例ほどではないものの、かなり大幅に変動していることがわかります。

 結局、「平均年率リターン10%」が意味しているものは、「株式というものは、短期的にはリターンの上下変動が非常に激しい金融商品である」が、「長期的には、リターンの良かった年が、悪かった年のリターンを補っている」ということにほかなりません。このことをよく理解しておけば、仮に株式が長期の平均リターンの水準を上回っている上昇基調のときでも、それによって株式の比重を急激に増やし、当初自分が意図していたものより、ポートフォリオのリスクを高くしてしまっていたことに、あとになって気づくことも避けられるでしょう。

*(注)スタンダード&プアーズ500インデックス(1926年~1970年)、ダウ・ジョーンズ・ウィルシャー5000コンポジット・インデックス(1971年~2003年)によると、この期間の米国株式の平均年率リターンは10.4%でした。なお、本文のリターンに関するコメントは、税金などのコストは考慮していません。個別の株式や分散化されていない株式ポートフォリオのリターンとは異なります。-----
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