分散投資:俗説と誤解

世界最大級の運用資産規模を誇る投資信託会社、バンガードがお届けする運用コラム。世界経済を大局的にとらえ、正しい運用のあり方を示唆します。(現在は更新しておりません)

分散投資:俗説と誤解

 現代ポートフォリオ理論が語られるはるか昔に「ドン・キホーテ」の中で、相棒サンチョは、「賢人は、総ての卵を一つのカゴに入れないものだ」と、言っています。しばしば投資家はこの格言を誤解してしまうのですが、肝心なのは、「卵を異なったカゴに入れる」とはどういうことか、です。

 俗説(1) :ひとつより、複数のファンドを保有したほうがよい?

 ファンドが個別の銘柄に分散投資されているように、複数のファンドを保有することによって分散投資しようと考える投資家がいます。もちろん、国内株ファンドに海外株ファンドや特化型ファンドを加えて、ポートフォリオを分散化することは、時に賢明な場合もあります。しかし、多くのファンドを保有することが必ずしもポートフォリオを分散化していることにはなりません。
 例えば、すでにバリュー型ファンドを保有しているにもかかわらず、もう一つバリュー型ファンドを加えてもこれは分散投資にはなりません。「同じカゴに多くの卵を入れている」にすぎないのです。これは投資家が陥りがちな過ちの一つです。

 実際、分散効果はファンドの数とそれほど関係がありません。ライフサイクルファンドなどを通じ、一つのファンドだけで広く証券市場に分散投資することもできるのです。

 俗説(2) :複数の投信会社と付き合うことで分散投資はできる?

 もう一つ投資家の誤解として、「同一投信会社のファンドを複数持っていると、投信会社の倒産時等に資産の保全ができない。あるいは、そこまで極端でなくても、同じような投資スタイルに偏ってしまう」というものがあります。
 しかし、これはあまり適切な意見ではありません。ファンドの資産は法律により第三者の保管銀行によって管理されています。つまり、投信会社自身の資産とは分別管理されているのです。

 また、複数の投信会社に投資すれば、投資手法を分散することができる(一つの投資方法に偏らなくてすむ)という考え方についてはどうでしょう?事実、最近の研究によると、同じ投信会社の株式ファンド同士と、異なる会社の株式ファンド同士を比べると、前者の方が非常に似かよった投資成果を出していることが示されています。(*)この調査結果は次のようなことを示唆しています。同一会社のファンドマネージャーは同一の企業文化の下で働いており、共通の投資哲学や、同一のアナリストの同じリサーチをもとに運用を行っている、ということです。

 こうしたリスクは、投資戦略が異なる多数の外部運用会社と共同でファンドを運用管理しているような投信会社と付き合うことで、かなり抑えられます。投資家は、このように「アウトソーシング」を活用した投信会社の提供するファンドへ投資することで、複数の「カゴ」を手にすることもできるのです。
(*)Elton, Edwin J., Gruber, Martin J. and Green, T. Clifton, "The Impact of Mutual Fund Family Membership on Investor Risk" (May 2004). http://ssrn.com/abstract=562441

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