米国30年債の復活

世界最大級の運用資産規模を誇る投資信託会社、バンガードがお届けする運用コラム。世界経済を大局的にとらえ、正しい運用のあり方を示唆します。(現在は更新しておりません)

米国30年債の復活

日本国内の投資家でも、米国債券、もしくは米国債券に投資するファンドを購入している方は多いと思いますが、今回はその米国債券に関する話題です。
 米国政府は、当時まだ財政的に黒字だった2001年10月31日以来、30年国債の新規発行を停止していました。しかし先日、米国財務省は2006年第1四半期に30年債(もしくはそれに準ずる長期国債)の発行再開を検討していることを発表したのです。この長期国債の復活は、投資家にとってどのような意味を持つのでしょうか? バンガード債券運用グループ、デビット・グローク氏にインタビューしました。(注:ポートフォリオ・マネージャーの投資や市場に対する見解は、今後の状況に合わせて変化することがあります)

Q. 米国政府はなぜ2001年に30年債の発行を止めたのでしょうか?
グローク氏: 米国の財政収支は1990年代後半のクリントン政権で黒字に転じました。当時、この財政黒字は長期化すると考えられ、それこそ国債市場が必要でなくなるかのような勢いでした。米国経済はまさに“バラ色”の状態だったのです。ブッシュ政権に交代した時も、私たちは、この状態が当面続くと考えていました。2000年と2001年に、30年債の再開が検討されたこともありましたが、最終的に発行は見送られています。この時、財務省は今後の再開の可能性を全く否定したわけではなかったわけではありませんが、今回の発表は大方の予想に反しています。

Q. 財務省は、なぜ30年債の再開を決定したのでしょうか?
グローク氏: 2001年以来、米国財政の赤字は膨らみつづけています。連邦債務は若干減少しつつありますが、それでも財政赤字は未だ解消されていません。このため、財務省は現在の低長期金利を利用して、より長めの債券を発行しようとしています。彼らが30年債の発行を停止したとき、米国の2年債、30年債の利回り差は 2.7%でした。現在は0.5%に満たないため、低金利で長期の資金を調達することができるのです。それは、ちょうど個人が低金利を利用して家を購入したり、ローンの借り換えをするのと同じと考えてよいでしょう。最近では英国政府やフランス政府が50年債を発行しています。

Q. 歴史的にみると、米国債の発行停止と再開は珍しいのでしょうか?
グローク氏: そうでもありません。財務省は1998年に3年債の発行を停止し、2003年に再開しています。また、かつて発行されていた7年債が今後再開される可能性もあります。

Q. 個人投資家は今後30年を見越して、ポートフォリオを見直すべきでしょう か?
グローク氏: その必要はないでしょう。 30年債の復活は典型的な個人投資家にはほとんど影響がないと考えてよいと思います。そこから派生する問題が若干ある程度です。言い方を変えますと、30年債が加わる可能性のある長期債ファンドを所有している投資家には影響があるかもしれません。

Q. 30年債の発行再開は他の一般的な債券ファンドに影響を与えるでしょうか?グローク氏:直接影響を受ける債券ファンドは、運用対象となるベンチマークに30年債が含まれているファンドです。また、この債券が存在すると、30年物の社債の評価がはるかに容易になり、その結果として多くの企業が30年の社債を発行することになるかもしれません。

Q. 30年債の発行は他の資産クラスや特定の市場セクターに影響を与えるでし ょうか?
グローク氏: 直接的に大きな影響があるとはいえませんが、市場全体として捉えると重要な意味を持つと思われます。債券投資需要の観点からみると、保険会社や企業年金を持つ企業が負債の返済プランに照らして、30年債を大量に購入すると考えられるからです。

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