世界最大級の運用資産規模を誇る投資信託会社、バンガードがお届けする運用コラム。世界経済を大局的にとらえ、正しい運用のあり方を示唆します。(現在は更新しておりません)
経済が上昇局面にあるとき、すべての投資リターンは上昇する? いえ、必ずしもそうではありません。景気にプラスになるニュースはしばしば債券の価格を下落させます。その結果、債券ファンドのトータルリターンは下がることになるのです。
バンガードのエコノミスト、ジョゼフ・H.デイヴィス氏は、なぜ上昇局面の経済が一時的に債券投資の逆風になるのかをインタビューの中で次のように説明しています。
インタビュアー:景気に関連するいいニュースがあると債券価格が下がります。これはなぜでしょうか。
デイヴィス氏: 債券市場の動きに馴染みのない投資家にとって、これは重要な質問ですね。 一般的に、債券価格は景気がよくなるというニュース(経済の成長を示すデータ発表)によって下落します。それは、債券投資家がそうしたニュースをインフレ率が高まる悪材料として懸念するようになるためです。
景気がよくなってくると、高まる需要に応えるために企業の生産活動も活発化し、その結果、商品とサービス価格が上昇します。通常の債券は額面に対して予め決められた率の利息を投資家に支払うのですが、物価が上昇してくるとほかにもっと利率のよい債券がでてくるため、少ない利息しか払わない債券の価値は下がり、その債券の価格は下落してしまうのです。
さらにここで留意すべきなのは、金融市場が以前に予測していたことと、実際の状況とのギャップが債券価格の動向に大きな影響を及ぼすということです。例えば、インフレ率が前回予測していた数値よりも高かったり、経済成長が思ったより鈍かったりした場合、債券価格への影響はより大きなものとなるのです。
実際、最近の米国市場ではこれら両方のケースが起こっています。まずコアインフレ指標が概ね予想よりも高くなったため、短期債の利回りを押し上げ、主だった債券の価格を引き下げました。しかしこうした債券価格の下落は、消費支出や住宅投資活動などが予想していたより伸びていないという理由でその後再び上昇に転じました。
インタビュアー:では、債券ファンドに投資する投資家は、経済が上向きの時には債券投資を減らすべきでしょうか?
デイヴィス氏:いえ、その必要はありません。成長を続ける経済やインフレ率の上昇は、1日、ひと月、あるいは1年といった短期で見た場合では、債券ファンドの純資産価値を引き下げるかもしれません。でも長期的に見ると、結局は投資家に高い利息を提供する利回りのよい債券が順次ファンドに組み入れられることになり、ファンドのトータルリターンを引き上げることになるでしょう。
ただし、近い将来支出の予定がありキャッシュが必要などの理由で、保有している債券ファンドの下落を嫌う場合には資産配分の見直しが必要です。これは投資というよりはむしろ貯蓄といった考え方に近くなります。その場合は債券ファンドを保有するよりはむしろ、マネー・マーケット・ファンドに資金を移動した方がいいかもしれません。
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