シンプルな投資に戻ること

世界最大級の運用資産規模を誇る投資信託会社、バンガードがお届けする運用コラム。世界経済を大局的にとらえ、正しい運用のあり方を示唆します。(現在は更新しておりません)

シンプルな投資に戻ること

 新年第一回目の当コラムでは、米バンガード社のCEO、ジョン・ブレナン氏からのメッセージをお届けしましょう。

 私、ジョン・ブレナンがバンガードに入社して26年目の年を迎えましたが、現在、これほどまでに長期投資というものがシンプルになったことについて、驚きの念を禁じえません。私の入社当時は、シンプルな投資が普及するまでには長い道のりがあるように思えました。バンガード・ウェルズリー・インカム・ファンドのような長い歴史を持つバランス型ファンドは、今日のライフサイクル・ファンドの先駆けですが、当時は中途解約が頻繁に行われていました。例えば、1981年における同ファンドの引き出し額は資産の17%にも上っています。

 パフォーマンスの優れた小型割安株ファンドや長期社債ファンドなどを組み合わせてうまく分散投資できれば、バランス型ファンドに投資する必要はない、という意見もあるでしょう。こうした複数のファンドを組み合わせる投資アプローチは、投資セオリー上では理にかなっていますが、実行するのはなかなか大変です。

 おそらくそれが今、シンプルな投資が見直されている理由でしょう。日々多忙な投資家は、わずかな手間で投資目標が達成できるシンプルな投資方法に高い価値を見出しているのです。今日は、シンプルな投資が好まれる傾向と、その利点について考えてみましょう。

■バランス型ファンドの復活
近年バランス型ファンドの勢いが復活してきたのは、シンプルな投資が優勢にある現れでしょう。米国投資信託への資金流入データを見ると、90年代後半以降、バランス型ファンドへの投資が急速に伸びていることがわかります。
■自動加入スタイルの確定拠出型年金(401K)プランの出現
米国では、シンプルな投資は企業年金プランの中でも見直されつつあります。米国政府は企業に対していわゆる自動加入スタイルの401(K)プランを奨励しています。従業員は企業年金プランに自動的に加入し、その拠出金は引退資金に適したバランス型ファンドやライフサイクル型ファンドに投資され、拠出額も年々増えていきます。

■「少ない決断」は「良い決断」
もちろん、シンプルな投資はそれだけでは完結せず、十分な達成見込みのある投資目標があってこそ、その真価を発揮します。複雑な投資アプローチが非生産的であることを立証するのは困難ですが、学術研究や投資行動の調査によると、ポートフォリオを複雑にすることでマイナスの結果を招く可能性が高いことがわかっています。

■選択肢の多さは無気力を招く
投資の選択肢があることは良いのですが、それがあまりに多すぎると投資意欲が低下してしまいます。コロンビア大学は、企業年金プランの運用商品のラインナップが多すぎると、プランの参加者が減少する、という調査結果を発表しています。これは消費の意思決定に関する他の調査結果とも一致しているようです。

■資産形成のためのシンプルな方法
個人資産運用のコラムニスト、スコット・バーンズ氏の著書「カウチポテト・ポートフォリオ」から、シンプルな投資の効果を示す好例をご紹介しましょう。
 スコット・バーンズ氏が自ら設計した「カウチポテト・ポートフォリオ」(怠け者のためのポートフォリオの意)は、50%がバンガード500インデックス・ファンド(米国大型株インデックス・ファンド)、残りの50%がバンガード・トータル・ボンド・インデックス・ファンド(米国債券インデックス・ファンド)で構成されていました。バーンズ氏曰く、そのポートフォリオは「カウチに寝転がって、テレビのリモコンを片手に、もう一方の手でお菓子が入ったボウルを持っていても管理できるくらい」シンプルでした。 しかし、1992年から2005年までの間、このポートフォリオの年率リターンはなんと8.7%もあったのです。

■新年の抱負を立てるなら・・・
もし、今何か新年の抱負を立てようと思っているのなら、一度ご自分の投資プランを見直してみてください。どこかシンプルにする余地があるのではないでしょうか?

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