金融危機の後で - 連邦準備制度の財政改革の次の一手は?(第1回)

世界最大級の運用資産規模を誇る投資信託会社、バンガードがお届けする運用コラム。世界経済を大局的にとらえ、正しい運用のあり方を示唆します。(現在は更新しておりません)

金融危機の後で - 連邦準備制度の財政改革の次の一手は?(第1回)

今回は、米国バンガードで行われたウォールストリートジャーナルの経済記者デイビッド・ウェッセルのインタビューをご紹介します。 (このインタビューは2010年9月13日に行われました)
昨年、ウェッセル氏は

「In Fed We Trust: Ben Bernanke's War on the Great Panic」

(邦題:バーナンキは正しかったか? FRBの真相)という本を出版しました。本書は、今年、金融制度改革法(ドッド=フランク法)が可決され、弱った米国経済を回復させるべく新たな責務を担った米国連邦準備制度と政策決定者について書かれたエピローグが付け加えられ、ペーパーバックとして再版されました。
危機以降の米国経済

インタビュアー:昨年のインタビューで、あなたは連邦準備制度の財政危機への対応は基本的にうまくいったと述べておられますが、一年経ってその評価に変化はありましたか?

ウェッセル:私は、連邦準備制度が行った経済危機への最初の対応は評価に値するとは思いますが、2010年の秋の時点において、連邦準備制度、ブッシュ政権、オバマ政権が行った施策が十分であったと言うのは難しいと思います。景気回復は見られたものの、その勢いは弱く、現在は減速している状況です。それは当初意図されていたことではありませんでした。本のエピローグで、私は「ベン・バーナンキ議長が連邦準備制度理事会に留まり続けたなら、事態はより深刻になったであろう」と書きました。これは、大恐慌の再来はなかったものの、その多くが失業しており、職があっても不安定な状況下に置かれている米国の労働者にとっては、多くのメリットはなかったという意味が含まれています。

経済回復の施策について

インタビュアー:経済回復の施策において、何が成功し、何が不十分だったのでしょうか?

ウェッセル:連邦準備制度が金利を引き下げて、大量の長期国債を購入したことは、プラスのインパクトがあったと思います。2009年2月に制定され、批判の多いオバマ政権の景気刺激策ですが、これが経済的利益と政治的支持の両方を得るようには作られていなかったとしても、それをしなかったよりは状況は改善されたと思います。オバマ政権が連邦準備制度と行った大手金融機関のストレステスト(健全性審査)は、私が予想していた以上にうまくいったと思います。それは、銀行の信頼を回復させるものでした。しかし、これらの施策が行われても、米国経済は回復していません。米国政府の不明確な政策が問題であると言う人もいます。それは一つの要因であるかもしれません。それと同様に連邦準備制度にも非があると思います。現在、連邦準備制度は、その施策が十分であったか、そして長期国債の追加購入について検討しています。連邦準備制度は自らが下した判断に自信が持てないようです。

量的緩和と連邦準備制度の施策

インタビュアー: 批評家の中には、量的緩和政策を除いて連邦準備制度はその施策を使い果たしたと言う人もいます。量的緩和政策とはどのようなものですか。そして、連邦準備制度はそれが有効であるかをどのように判断するのでしょうか。

ウェッセル:連邦準備制度理事会は、通常、短期金利の誘導目標を上下させることで金融調節を行いますが、2008年の終わりにゼロ近い水準まで下げたので、その施策は用いることができません。そのため、短期金利については現状の水準を維持し、さらに1兆5000億ドル相当のモーゲージ債と米国財務省証券を購入したのです。その目的としては、一つには企業の長期借り入れや個人の住宅ローンにかかる長期金利を下げるためと、もっと基本的には、経済への資金の流れを滞らせないためです。

連邦準備制度の内部でもその施策がどれくらい有効だったのかついては議論があります。長期金利を最大1パーセンテージポイント下げることができたのではないか、という意見もあります。その一方で、もし金利の下げ幅が大きすぎたり小さすぎたりしていたら、経済的にも政治的にも連邦準備制度を大きなリスクに晒しただけで、大していいことはなかったという声もあります。

はっきり言えることは、現時点で正確にどの程度有効だったのかを判断するのは難しいということです。従って、この政策をさらに進めるべきかどうかは、現在の経済をどう解釈するかによるところが大きいのです。 つまり、この政策を支持する人たちが、今後もその政策を継続すれば経済の活性化につながると考えるかどうかも、現在の経済をどう解釈するかによるのです。現時点で市場は、彼らがさらにこの政策を進める、つまり、より多くの証券を買うという推測に傾いていますが、これについては慎重に様子を見ていくべきでしょう。
次回に続きます。

安心して老後を迎えるための5つの原則-バンガード会長兼CEOビル・マクナブのスピーチより (関連コンテンツはこちら)

http://www.vanguardjapan.co.jp/vanguardjapan/company/news/vijnewsletter201010vol16.cfm?vjts=MXML_101105

(バンガード・インベストメンツ・ジャパンのウェブサイトに移動します。) (C) 2010 The Vanguard Group, Inc. All rights reserved.

-----------------------------------
「トヨタアセット・バンガード海外株式ファンド」のお知らせ
 バンガードグループのインデックスファンドの組入れによって運用を行う ファンドオブファンズ形式の国内投資信託です。
 販売手数料なしのノーロード投信で、1万円から買付け可能。積立てもOK。
http://www.monex.co.jp/FundGuide/00000000/syohin/tousin/kihon/guest?MeigCd=++0049510000

※投資信託をお申込みの際には、「目論見書」「目論見書補完書面」
をご確認ください。

-----------------------------------
※リスク・手数料等に関しては、「リスクおよび手数料等の説明」の
 「『トヨタアセット・バンガード海外株式ファンド』に関する重要事項」を ご覧ください。

マネックスからのご留意事項

「バンガード・海外投資事情」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧