金融危機の後で - 連邦準備制度の財政改革の次の一手は?(第3回)

世界最大級の運用資産規模を誇る投資信託会社、バンガードがお届けする運用コラム。世界経済を大局的にとらえ、正しい運用のあり方を示唆します。(現在は更新しておりません)

金融危機の後で - 連邦準備制度の財政改革の次の一手は?(第3回)

今回も前回に引き続き、米国バンガードで行われたウォールストリートジャーナルの経済記者デイビッド・ウェッセルのインタビューをご紹介します。ウェッセル氏は昨年出版された

「In Fed We Trust: Ben Bernanke's War on the Great Panic」

(邦題:バーナンキは正しかったか? FRBの真相)の著者として有名な人物です。(このインタビューは2010年9月13日に行われました)

インタビュアー: 今回の金融改革で金融安定化監督評議会という機関が設けられましたが、これは今後、金融監督当局がサブプライム問題のような動きを察知し混乱を未然に防止するために、どのような役割を果たすのでしょうか。
デイビッド・ウェッセル:金融安定化監督評議会が実際にどのように機能するのかはまだわかりません。金融安定化監督評議会は財務長官が議長を務めますが、これは注目に値します。過去の財務長官は、金融機関に対して監督責任はあったものの、強く介入する権限は与えられていませんでした。ガイトナー財務長官は今回の措置は「(軍に対する)シビリアン・コントロールのようなもの」と言っています。つまり、大統領から任命され、上院によって使命される人物が、金融規制に関する最終的な責任を負うことになるからです。

最もわかりやすい例としてAIGの一件が挙げられるでしょう。AIGは巨大な保険会社でありながら、「カジノを経営していた」といわれるほど大量のデリバティブ取引を行っていました。しかも「カジノ」で賭けた人に支払えるだけの資金を持ち合わせていませんでした。しかし、これが規制の大きな抜け穴を通ってしまったのです。規制を行うはずの機関も全く機能していない状態でした。
今後、金融安定化監督評議会は、企業に対して「銀行であろうと、保険会社であろうと、アイスクリーム製造会社であろうと関係なく、財政的にも組織的にも大きな影響力を持つ企業はすべて、当局の監督対象である」と言える権限があります。そして、これを機に、必要なことは何であれ議論の俎上に上げられていくでしょう。例えば、サブプライム問題などは、すでに2000年代の半ばから「何らかの対策を講ずるべきだ」と言われていたにもかかわらず、誰も責任をとらないまま放置されてしまっていたのです。連邦準備制度にも責任の一端はあったでしょう。しかし、これがうまく機能すれば、最悪の事態になる前に問題を提起できる体制ができます。もちろん、完全ではないかもしれませんが、今よりも状況が悪くなることは考え難いでしょう。

次回に続きます。

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