新型ウイルスとマーケット
NBAのスーパースターだったコービー・ブライアントさんがヘリコプター墜落事故で亡くなりました。ご冥福をお祈りします。しかし彼ほどのスーパースターで、かつヘリコプターが好きだったようですから、機体もパイロットも超一級でしょう。それでも墜ちるのだから、ヘリコプターは墜ちる時は墜ちるものだと考えざるを得ません。
濃霧の中での飛行だったようで、一流ヘリコプターで一流ベテランパイロットだから、スーパースターを乗せてその要望に応えて、「このくらいの霧、大丈夫です」と思わせた心の隙が、悲劇に繋がってしまったのかも知れません。「君子危うきに近寄らず」とは、つくづく含蓄のある言葉だと思います。
トレーダーや投資家も、同じように危うい所から逃げます。リスクを回避する訳です。新型ウイルス肺炎の規模・強さ・メカニズムが不明で、対処方法も未だ確立されていない中で、リスクを回避し、即ちリスク資産を売るので、世界的に株価が下がっています。ところで君子が近寄らないべき危険は、ユニークな特定的な危険で、それは例えば命を奪ってしまうような危険です。新型ウイルスは、個人にとっては近寄るべきリスクではありません。しかし統計的に捉えた新型ウイルス肺炎は、恐らく通常のインフルエンザよりも遙かに小規模なものです。
マーケットは特定的な要因よりも、一般的な、統計的な要因に影響されるべきものです。今の売られ方は、トレーダーなどの個人的な不安が、統計的なリスクを大きく上回って表現されてしまっている、と感じます。ホルムズ海峡の緊張よりも、新型ウイルスの方が果たして経済に大きな影響を与えるのか。マーケットはいつでも興味深い思考材料を与えてくれます。
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