10月27日のつぶやきで触れた南米最貧国ガイアナ共和国の油田ですが、これが次の紛争の火種になりかねない事態へと緊張が高まっています。
隣国ベネズエラのマドゥロ政権が、ガイアナの国土の約7割を占めるエセキボ地域を自国領と主張、12月3日に国民投票が実施され国民の95%が領有権の支持に賛成しました。ガイアナはこれに反発し国連の安全保障理事会への提訴を検討しています。ベネズエラ政権は国営石油会社に対しエセキボ地域での原油採掘手続きを認める意向で、ガイアナの了承が得られぬまま石油採掘を始めるリスクが出てきました。
1899年に国際仲裁裁定でエセキボはガイアナのものと定められていますが、ガイアナとベネズエラは19世紀から領土問題を抱えています。寝た子を起こしたのが2015年米石油メジャーExxon Mobilがエセキボ地域に発見した巨大油田。現在Exxon、Shellなどが開発を進めており、2028年には100万バレルを超える原油生産国へと成長する見込みです。ベネズエラは、エセキボ地域の東を南北に流れるエセキボ川が自然の国境であるとし1899年の裁定は無効だと主張しているのです。
そもそもベネズエラも世界最大の原油埋蔵量を誇っているのですが、トランプ前政権が2019年にベネズエラ制裁に動いたことで、ベネズエラの石油生産は低迷、米国とベネズエラの石油取引は禁じられていました。
しかし、インフレにあえぐバイデン政権下で、ベネズエラ制裁は段階的に緩和されています。ロシアのウクライナ侵攻で原油価格が急騰した2022年5月に制裁の一部を緩和、同年11月に米石油大手シェブロンに対して、ベネズエラでの合弁事業再開を許可。以降、ベネズエラの石油生産は増加、石油輸出量は制裁が強化された 2020年以前の水準まで回復しています。今年10月にも、米政府はベネズエラの石油・ガス取引に関するさらなる制裁の緩和に動いたばかりです。足元ではOPECプラスの減産継続でも下落基調にある原油価格ですが、ベネズエラ制裁緩和も足元の原油価格の下落の一端を担っているものと思われます。
米石油メジャーが関与するガイアナにベネズエラが踏み込んでくることとなれば、米国も黙っているわけにはいかないでしょう。制裁強化に動く可能性は低くありません。ガイアナを巡るベネズエラの暴走が原油急上昇のトリガーとなる日が来るかもしれません。
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