今日午後一のトップニュースは、「西武ホールディングス(9024)、東京ガーデンテラス紀尾井町を4000億円で売却か」というものでした。買い手候補は米最大手級投資ファンドのブラックストーン。成立すれば国内過去最高の不動産取引となる見込みです。この物件については、年初から売却説が報じられていましたが、その時点の推定価格は3000億円程度、あるいは3000億円以上とされていて、今回の報道よりもかなり低い金額を軸に議論されていたことが窺われます。国内資産価格の上昇の勢いを改めて感じます。
こうした上場企業の資産売却の動きは不動産だけではありません。直近では、金融機関が政策株式の売却加速を発表していますし、紙パなど事業環境が厳しい業界では子会社の売却が相次いで発表されています。一方で、企業や事業の買収も急増しており、今年1-9月の件数は678件と、前年同期比で22.8%の大幅増となっています。この中には、親子上場解消のための子会社株の買収も含まれるとみられます。例えば、キリンホールディングス(2503)が持分法適用会社のファンケルを、コナカ(7494)が子会社のサマンサタバサを、それぞれ完全子会社化(または発表)しました。
こうした企業の構造改革の流れは、近年稀にみる勢いで進んでいますし、今後さらに加速するでしょう。背景にあるのは、昨年3月以来東証等が主導している「資本コストや株価を意識した経営」です。昨年は、まだどう開示するかという初期段階でしたが、今年に入り、事業や資産ごとのWACC(Weighted Average Cost of Capital、加重資本コスト)とROIC(Return on Invested Capital、投資リターン)を考えて、事業を見直す動きが始まった印象です。
それでも、まだ多くの企業は、自社のランドマーク案件や祖業を整理するには至っていないと思います。しかし、今後は、国内金利が上昇するにつれWACCも上昇しますから、資産ごとのROICを厳しく検証し、コストに見合わないものはたとえ社長の想い入れが強い事業でも、リターンが高い事業に入れ替えるという動きが進むでしょう。
まさに、ここからが経営陣の腕の見せどころです。個人投資家の皆さんも、投資先企業の事業ごとの収益に目を光らせて、ダイナミックな動きを進めるような経営者に注目してみてはと思います。
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